絵空言 空言

絵空言




愚者の祈り

祓へ給へ
清め給へ
幸魂
奇魂
惟神
守り給へ
幸へ給へ

はらへたまへ
きよめたまへ

さきみたま
くしみたま
かむながら
まもりたまへ
さきはへたまへ


祓へ給へ
清め給へ

私を


守り給へ
幸へ給へ

あなたを


祓へ給へ
清め給へ

此の國を


守り給へ
幸へ給へ

この世界を


祓へ給へ
清め給へ
幸魂
奇魂
惟神
守り給へ
幸へ給へ

全ての全てを


  1. 2016/11/08(火) 21:58:05|
  2. 空言

心臓

凍りついた心臓は
溶ければまた
脈打ち始めると思っていた

熱き血が流れ
全てが元通りになると 信じていた
優しさも労わりも
安らぎも愛しさも
慈しみも
元に戻ると そう信じ込んでいた


けれども凍りついた心臓が
溶けた後には


…何もなくなっていた

残ったのは 虚空


凍りついた心臓は
溶けて
跡形も無く 消えてしまった


残ったのは 虚空

そこはもう 人間の住処ではない

空空漠漠たる 虚空

もう 手の施しようもない…



  1. 2016/04/01(金) 21:11:29|
  2. 空言

神ノ記

古ニ神アリ
姓ハ 真
名ヲ 無
字ヲ 虚空(うつろ)ト云フ

正伝ニ傳フ処
或時 神 戯レニ 世界ヲ創ル
ソノ数 三千ト云フ
異聞アリテ
世界ノ数 三億トモ無数トモ傳フ

神ハ世界ニ生命(いのち)ヲ創リ 自由ヲ与ヘ
見守リ 哀シミ 慈シンダト云フ

マタ異端ノ書ニ傳フ
神ハ神二飽イテ 自身ヲ世界二変エタト
神ハ神自身ヲ忘却シ
世界ノ内ニ 生命(いのち)トシテ棲ミタリ

世界ニ飽イタ者
倦ンダ者
世界ヲ厭ウタ者
再ビ神ヲ想起シ 神ニ回帰シタト云フ

(まこと)ノ処ハ 定カナラズ




  1. 2015/12/14(月) 19:00:30|
  2. 空言

永劫回帰

進めども進めども 何処へも行けぬ

歩めども歩めども 何処へも着けぬ

私たちは回し車の中を駆け続ける鼠のやうで

いつまでもいつまでも まるで何処かへ行けるつもりで

何処までも何処までも 進んでゐるつもりで

走り続けて走り続けて 草臥れ果てて

私たちは…

  1. 2015/12/12(土) 21:52:57|
  2. 空言

無力





季節は過ぎて 行くけれど
私は独り 為す術もなく
独り 佇み
独り 空を見上げ

独り 消える

  1. 2015/12/12(土) 21:23:43|
  2. 空言

言の葉

私の言葉は
誰かに届いたろうか

書き散らかされた
私の言葉は
誰かの心に 触れたろうか

過ぎ去り行く人波の中に
溶けて消えた 私の言葉が
見知らぬ誰かの心に
いつか芽吹くとでも言うのだろうか

言の葉 散りゆき
私は独り 立ち去りて

  1. 2015/06/16(火) 21:44:29|
  2. 空言

うつろ

虚ろなままに 生を往き
己が何かもわからずに
世界を知れるわけもなく
ゆえに世界を問うのはやめにして
虚ろなままに 言葉を紡ぎ
己を問うてはみたけれど
虚ろなモノは 虚ろなままで
カラカラと 心は虚ろに空回り

いつかの夢に 神を見て
虚ろなままに 神を問い
答のないのが答だと
思い知らされ 項垂(うなだ)れて
虚ろなままに 溜息を吐く

生と呼ばれているこれが
何であるかは知らないが
地上と呼ばれるこの世界
いつまでいなけりゃならぬのか
今此処で
無何有の地へと 
消えてしまえばいいものを
  1. 2015/06/16(火) 21:43:30|
  2. 空言

詩が書けない

今日も一日 詩が書けない
浮かんだ言葉は空中分解
頭の中はガラクタ一杯

気分一新散歩に出ても
いつもの景色はいつものままで
ガラクタ頭に風が素通り

いつもの公園
いつもの池には
鯉にボートに家族連れ
早咲き桜を眺めても
空っぽ心に響かない

とぼとぼ歩いて帰り道
首を傾(かし)げて帰り道
無理やり言葉を捻っても
頭も心も知らん顔

映る世界を言葉にしても
それではただの説明で
やっぱり今日も一日 詩が書けない
  1. 2015/06/16(火) 21:42:36|
  2. 空言

死と呼ばれる この深淵に

死を眺めていた
遠く遠くに 死を眺めていた
そう 思っていたのに

気づくと
死を覗き込んでいた
手を伸ばせば触れられそうな 深淵を
言葉もなく
覗き込んでいた

生が色褪せ 遠くなってゆく

私に遠かったのは
死ではなくて 生でした

「死にたいのかい?」

いいえ 私はただ
死と呼ばれるこの深淵に 触れていたいだけなのです

  1. 2015/01/26(月) 21:41:45|
  2. 空言

僕には 心がありません
心は地上に置いてきました
僕は今 何処にいるのでしょう
深い深い 海の底
光の届かぬ 淵の底
不思議な生き物たちが
闇の中から現れて
僕を啄んでは消えていきます

心を失くしたのはいつでしょう
それは昨日のことかもしれません


僕には 心がありません
心は故郷に置いてきました
僕は今 何処に漂っているのでしょう
遠い遠い 空の果て
星すら消えた深宇宙
それでもそのまた向こうの闇から
懐かしい誰かが呼ぶのです
こちらへおいで
真の闇を教えてあげよう

心を忘れたのはいつでしょう
それは生れた日なのかもしれません


人に触れ合うたびに思います
どうしてこんなに遠いのだろう
どうしてこんなに届かないのだろう

そうして僕は
人に届こうとしていた自分に驚くけれど
この距離を
いったいどうすれば埋められるというのだろう

わからないまま
僕は深くに沈み 
宇宙の果てを垣間見ます

世界は小さく小さく萎縮して
人は遠く遠くに離れていきます



テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/10/30(木) 21:41:39|
  2. 空言

世界は幾重にも

世界は幾重にも折り重なっていて
でも僕は一つの世界しか見えなくて
君も一つの世界しか見えなくて
そんな世界で
誰に何が届くのだろう

僕の世界は僕にとっては当たり前で真実だけど
君にとっては不可解で
あなたにとっては胡散臭くて
おまえにとってはバカげてる

僕にとっては
君の世界は楽しくて
あなたの世界は美しく
おまえの世界は退屈だ

世界は幾重にも折り重なっていて
隣の世界すら朧に霞む

僕らはいつまで気づかない?
無数に重なるこの世界に
僕らはいつまで安住できる?
脆く儚いこの世界に

重なり合った世界が
衝突し 罅割れて 砕けていく
互いに気づかぬままに
蝕み合い 打ち消し合い
消えていく 消えていく 消えていく

それは崩壊ですか
中和ですか
再生ですか
それとも 死なのですか

世界は幾重にも折り重なっていて
でも僕は君の世界の一面しか見えなくて
君も僕の世界の一面しか見えなくて
そんな世界でも
君がいてくれるならそれで十分なんだろう

テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/10/03(金) 21:33:36|
  2. 空言

神拝詞(となえことば)

はらえたまい
きよめたまえ
かむながら
くしみたまい
さきわえたまえ

俺はねぇ人間には絶望したよ
とか勝手なことを口実に
出鱈目な酒を呑みながら
気づくと呟いている

はらえたまい
きよめたまえ
かむながら
くしみたまい
さきわえたまえ

何を言っているのだ 俺は
人間なんてどうでもいいのだ
存在なんてどうでもいいのだ
もう何もかも知ったことではない

頭の逝かれたことを
繰り返し
繰り返し
繰り返し
生々滅々だか
生成消滅だったか
何でもいいけどそれだけの話だ

明滅して
明滅して
俺たちは何をやっているのだ
どうせ虚空に漂うだけなら楽しくやりゃいいのに
こんなものが楽しいのか

わからねぇ
わからねぇ
趣味が合わねぇ
生きて死ぬだけなのに
ワケが分からねぇ
裸足で逃げ出したい気分だ

そうして黙り込んで
気づくと呟いている

はらえたまい
きよめたまえ
かむながら
くしみたまい
さきわえたまえ

神拝詞(となえことば)といったか

今更まったく何を祈っているのだか
今更いったい誰のために祈っているのだか
いや  俺じゃねぇ
逃げ出す算段を捏ねているような
そんな自分のために祈ってどうすんだか


祓え給い
清め給え
神ながら
奇しみ給い
幸え給え

・・・

奇しみ給い
幸え給え

・・・

幸え給え

・・・

誰のために祈っているのだか

・・・

ラム酒もウォトカも
あんなに甘かったのに
なんだか苦くなってしまった


テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/09/20(土) 21:33:59|
  2. 空言

断片的想念

玄関脇で引っ繰り返っていた蝉
突ついたら ジジジッて鳴いて飛んで行った
もう長くもなかろうに
いったい何処へ行こうというのだろう

僕らは世界の中にいるはずなのに
何だか世界が遠くに感じるよ
君の記憶も遠のいて
君の笑顔も想い出せない

小さな小さな意地の張り合い
大切なモノは呆気なく砕けて消えて
夢とも現(うつつ)とも知らぬまま
僕らは何処へ行こうというのだろう

僕らは神の中にいるはずなのに
何だか神が見えなくなってしまったよ
何処かの僕らは狂い続けているようだけど
僕は僕の正気に自信がないから為す術もない

僕にはもう何もかもがわからなくなってしまって
ぼんやり世界を見ていたりするんだけど
僕も世界もやっぱりわからなくて
何もわからない僕は
もう何処へも行けないのかもしれない

テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/08/09(土) 11:49:44|
  2. 空言

空へ

何処をどう歩いてきたかは忘れたが
気付いた時には
理想は腐り
夢は錆びつき
哲学も
宗教も
薄っぺらくなって矛盾だらけで
ニヒリズムも
アナキズムも
ただの水溜りになってしまった

何もかもが
雨の日に園児たちが長靴はいてパシャパシャやってる
濁った水溜りだ
なんでそんなものがまかり通っているのか
なんでそんなものに満足できるのか

僕は溺れて死ねるだけの深さが欲しかったので
すべての消えていける深さが欲しかったので
一人で深淵を探しに行ったのだけど
海も湖も見つからなくて
延々と歩き続けてはみたけれど
この星には海も湖もないようで
僕は少し困ってしまった

つまんないな

そう思って寝転んで
見上げた空に
僕は溺れて死ねる深さを見つけた

嬉しくなった僕は少し笑って
そのまま空に 溺れて死んだ

何もかもが空の中に 小さくなって

やがて消えてしまった


テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/07/15(火) 19:51:05|
  2. 空言

存在する必要のない宇宙の中に
私が存在する必要など
ありはしないのに

なんで私は生まれたんだろうな
まだ生きてるんだろうな
存在してるんだろうな

この意識
私という認識

記憶された過去
想像される未来
此処という現在

何なのだろうな これは

わからない

わからないというのは 何なのかな
わからないという認識はどこから来るのかな
それもわからない

わからないということもわからない

存在する必要のない宇宙
それもまた私の認識

存在も必要も宇宙も消えて
私が消えて
残ったのは認識なのかな

わからないという認識
わからないという思考
わからないという意思
わからないという言葉

何なのだろうな これは…
  1. 2014/07/05(土) 06:50:33|
  2. 空言

渾沌

いつの間にか
生も死も
精神も物質も
何もかもが溶けてしまったようで
雨音の中に
渾沌を眺めている

地に足が着かない
…そうなのかもしれない

そうなのかもしれないけれど

私は…
地に着くことを頑なに拒んでいたようでもあり
足を着けるべき地が 見つからなかったようでもある

今更 地など何処にあるのだろう

着地点を探しあぐねていたら
いつの間にか
天も地も消えてしまったみたいで
何もなくなってしまったんだ

消えたのは錯覚だろうか
消したのは私だろうか

それとも
此処が 地だとでも言うのだろうか
  1. 2014/07/05(土) 06:49:35|
  2. 空言

Memento Mori

私らは世界を語る
目に見える世界を
目に見えぬ世界を
世界の成り立ちを
その構成と歴史を語る

私らはあるべき世界を語る
夢を 理想を 愛を語る

けれども 私らは死を見たろうか

私らは日々愚痴り怨嗟の呻きを上げているかもしれない
日々感謝と優しさと慈しみに満ちているかもしれない

けれども 私らは死を見たろうか
死という私らの双子の片割れを

隣人の死ではなく
親子兄弟の死ではなく
親友や愛人の死ではなく
私らの見ることのできる死は
私ら自身の死のみであることを
私らはどれほど知っているのだろうか

いつだって私らの隣に座っている死の素顔を
私らが本当に覗き込んだことはあったろうか
日常に埋もれ
喜怒哀楽を移ろい
私らは顔を背けてはこなかったろうか
私ら自身の隣に 背後に 目前に 足下に
或いは頭上に
死は常に在ることに
知らぬ振りを続けてはこなかったろうか
私らが私らの作り上げた小さな箱庭の壊れることをただ恐れたがために

私らは私らの死を
どれほど知っているというのだろう
遅かれ早かれ私らは死に抱き取られて死ぬだろう
それでも私らは
死を見知らぬままに過ごすつもりか
死を見知らぬままに死ぬるつもりか

死を見る度合いが
生を見る度合いだと
言ったのは誰だったか

死を見ずに 生を過ぎ行きて
それで 生きたことになるのか
それでも人は死ぬのだから
それでいいと多くの私らは言うのかもしれないけれど
あなたまでがそう言うのか

けれども私は一人 首を傾げる

私らの道標は
虚無ではない
孤独でも 苦でもない
私らの真の道標は

ただ 死 のみであるのに


道標も見ずに
私らは一体 何処へ行こうというのだろう


  1. 2014/06/03(火) 20:17:51|
  2. 空言

汎神論

神は 世界のすべて
世界の像(かたち)が 神の像
神の像は 世界の像

私たちは 今 此処で
神を造り続けている

神は 人を造り
人は 神を造り続けている

私たちは 狂気の神を造り
至福の神を造り
神の顕現であり続けている

あなたは言うだろう
この狂気の渦は何なのだ?

私たちが神を 私たちの外に見るから
わからなくなるのだ

あなたは問うだろう
神は日本をどうするつもり?

それはあなた次第さ と神の霊たちが笑う


元の元の大神様は
光でも闇でもない
何処までも透明な 透き通った水

私たちは水の中の水
魚になった夢を見ている
外にくるっと廻って闇を拡げ
内にくるっと廻って光を照らす
夢?いや…夢ではないのだけれど
近頃は闇が拡がるばかりのような
それでもやっぱり夢のような

私たちは夢の奥深くに入りすぎて
引き返せなくなってしまったみたいで
帰り道が わからなくなってしまったみたいで

このまま

戻れないまま

朽ちてしまうのかもしれない




  1. 2014/04/30(水) 21:36:48|
  2. 空言

綻びていく景色

今日 散歩をしていたら
景色が少し 綻
(ほころ)びていました

空は青色で
桜は薄紅色で
いつもどおりだったのだけど

それでもやっぱり
景色は少し 解
(ほど)けていました

(さび)色の時代が 近いようでした

僕は口の中に 血の味がして
唾を吐いたけど 血の味はとれなくて

見上げれば梢の先を 風が渡っていきます
鳥のいない空を 雲が過ぎていきます

いつもどおりの道に
いつもどおりの僕の影法師

それでもやっぱり
景色は確かに 綻び始めていて
解け始めていて
腐食し始めていて

それは誰も気づかないうちに始まっていて
誰もが気づき始めた頃には手遅れで
僕たちは泣き笑いながら死んでいくしかないのだけど

僕には為す術
(すべ)が ない

青い空も
薄紅の桜も
消えてしまうかもしれないのに

僕にはまるで 為す術がない

だから僕は
いつもの影法師を踏みながら
いつもの家路を辿りながら

そっと 世界を手放そうと思った




テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/03/30(日) 22:08:00|
  2. 空言

死と虚無を あなたに

死が空に満ち
虚無が地を埋め尽くす

誰もが視線をそらし
誰もが聞こえないふりをした

だから私は独りで死を叫ぶ

他の誰かの死ではなく
私は私たちの死を叫ぶ

そうして私はあなたに
私たちの死を謳おう


風は死を運び
世界は虚無に覆われる

誰もが嫌な顔をし
誰もが新たな話題を探し始めた

だから私は独りで虚無を語る

机上の空論ではなく
事実としての虚無を語る

そうして私はあなたに
虚無を捧げよう


誰もが立ち去り
私は独り
誰もいなくなるのを待つとしよう



テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/02/14(金) 21:20:17|
  2. 空言

雪に想う

雪の降る日には想い出します
世界がまだくっきりと輪郭を保っていた日のことを

善と悪が分かれ
人と獣が分かれ
生と死が分かれていた日のことを

風に舞う雪の中に想い出します
世界が陰陽に分かれて回転していた日のことを

愛と憎が分かれ
理と情が分かれ
天と地が分かれていた日のことを

その背反する二律が世界を世界たらしめていたことを

それはまやかしだったのでしょうか
あれはまぼろしだったのでしょうか

世界は精緻な機械のように
完璧な歯車と化して回っていたはずなのに

何処で狂い始めたのでしょうか
誰が楔を打ち込んだのでしょうか

まるで当たり前のように日は昇り
日は沈み

そうして世界が

渾沌の海に崩れ落ちたのは
いつだったのでしょうか



この果てのない混沌の中に
雪を見る日は想い出します


世界が


まだ


世界だった日のことを


  1. 2014/02/08(土) 13:50:46|
  2. 空言

自灯明 法灯明

日も傾いてきたので
まだ明るい内に言っておきます

闇が訪れたら
闇の中で光を探さないでください

どれほど深い闇であっても
光を探す必要なんてありません

光を求めることも
望むことも やめてください

何故なら

一人ひとりが光なのですから


日も暮れてきたので
まだ言葉が届く内に言っておきます

長く孤独な闇の中で
誘蛾灯に群れる蛾にはならないでください
チョウチンアンコウの明かりに引き寄せられる小魚にはならないでください

いくら光に群がっても 光は拡がりません
光に群がるだけでは その光すら覆い隠してしまうかもしれません

だから灯りに群がる必要なんてないのです

一人ひとりが灯りを掲げているのですから

そうして
灯りを分かち合うことも
分け与えることも
振り撒くことも
押し付けることも 必要ありません

灯火を宿しているのはあなただけではないのですから
あなたの出会う誰もが灯火を宿しているのですから

それを忘れないでください

それを忘れることなく 光と光が寄り集まるなら
光は拡がりもするでしょう



いつの世にも 闇に棲息するモノたちはいるのです
灯火を忘れて 闇に遊ぶモノたちがいるのです

それは仕方のないことです
それはあなたの灯火を思い出させてくれるかもしれませんが 関わる必要はないのでしょう

どう仕様もない闇の中で
闇を相手に争っても 光は拡がりません
正面から争うなら 光は闇に呑まれていくでしょう


闇に消えゆくモノたちも
光へ回帰するモノたちも
すべては “それ” の顕われに過ぎません


すべては過ぎていきます

それだけのことです…



テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/12/09(月) 05:40:02|
  2. 空言

白漠

雨の中で 何を夢見ている
降り頻る 雨の中で

風の中で 何を求めている
吹き荒ぶ 風の中で

視界を白く覆う 雨飛沫の中で


千切れ飛ぶ 思念の渦
相互干渉する 理想
聞く者もなく 記憶は泣き叫ぶ

海は濁り 泡立ち 
爪を立てる者たちの爪を削ぎ
牙を剥く者たちの牙を砕く

何事もなかったかのように
当たり前かのように

それは俺らの無力を知らしめる

終(つい)には
白漠の内に

俺らを消し去ることによって







  1. 2013/04/23(火) 20:30:34|
  2. 空言

先生は どう思いますか?


ねぇ 先生
自由意思って あるのかな
先生は どう思いますか?


僕には どうしても あるようには思えないんだ
寸分違わず同じ状況で
僕らは 寸分違わぬ同じ選択をするしかないじゃないか
ねぇ 何処に自由意思があるんだろう?

僕らは わけのわからぬ世界を見させられて
わけのわからぬ世界を生きてるつもりになってるだけなんじゃないのかな

本当は 僕らは 
誰もが誰でもないんじゃないのかな

ねぇ 先生は この世界が 狂ってるって思ったことは ない?

世界という このわけのわからない何かが 
偶然の産物なのか
得体の知れぬ誰かの計画なのか
そんなのは知る由も無いけれど

僕には どうしても 自由意思があるなんて
信じられないんだ


ねぇ 先生
先生には 時々 未来が見えるのでしょう?
先生の目には どう見えているのですか?
どんな景色が 広がっているのですか?
未来は 変わり得るのですか?
異なる未来は 有り得るのですか?

僕の生きている未来
僕の死んでいた未来

そして
僕の ただいるだけの この世界

いつか何処かで 分岐したのですか?
それとも
世界は この世界しかないのですか?


教授がね 言ってたんだ
三次元の高みからは
ありとあらゆる宇宙が見えるって
有り得る全ての 過去と未来が見えるって
そう言ってたんだ

僕には よくわからなかったけれど
教授は 何だか自由意思を前提にしていたみたいなんだ

「何にしろ お前次第だよ」

そう 言ってたから

でも僕には その前提が わからない


ねぇ 意思って 何だろう?
意思そのものが 幻なんじゃないのかな?

僕らは 未来を意思すれば
自由に 未来を築けるのかな?

でも それで築かれた未来が
決められた何かを なぞっているだけじゃないなんて 誰にもわからないよね

ねぇ 本当は 誰もがみんな 
決められた何かを なぞっているだけなんじゃないのかな

でも そんなの 狂ってるよ
だって そうだろう
何の意味もないじゃないか
そんなんだったら
初めっから 何もなくていいのに
なんで 宇宙は 始まったんだよ

なんで わざわざ こんな

あぁ やっぱり 僕には耐えられない


・・・狂っているのは 僕なのかな



ねぇ 先生
自由意思って あるのかな

先生の目には どう映っていますか?

テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/05/07(土) 18:02:20|
  2. 空言

四月十四日


聞いた話なので
真偽の程は 知らないが


予知能力のある 子供が 
幼稚園の先生に言ったそうだ

「五月に また 大きなのが 来るよ
先生 死んじゃうよ」

その子の能力を知っていた先生は
青ざめるしかなかったらしい




自分が言われたら どう思うだろうか





そして・・・


俺は 自分が 
まだ しばらく生きると
当たり前に
思い込んでいることに 気づいた











・・・少し 意外だった


テーマ:日記 - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/04/14(木) 22:07:45|
  2. 空言



踊る光は 大地に 陰影 

踊り戯れ イノチに 反射

舞い散る桜は 光に揺れて

僕は束の間 虚無を忘れる




テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/04/09(土) 22:07:43|
  2. 空言

あたしという存在

あたしという存在


あたしは時々
優しい と 言われる

そして 時々
冷たい と 言われる

でも あたしは
知らないんだ

優しさも 冷たさも

何も わからないんだ

だからそんなことを言われても
少し困惑して
少し作り笑いをして
よく聞こえなかったフリをする

わからないことは 気づかぬうちに 増えてくみたいだ

・・・孤独
知らないね
何ですか? それは

知らない
・・・愛
・・・友情
わからないな  あたしには

何なんだよ?
・・・恋
・・・思いやり
知らない


いや 嘘だ

本当は 知ってる

・・・いや それも嘘だな

孤独も 恋愛も
たぶん 知っていたような気は するんだ

いつだったかな
恋をしたのは いつだったかな
孤独に苛まれていたのは 
いつのことだったかな

確かに そんな日々が あったような気はしてるんだ

でもね
全部 忘れちまったみたいなんだよ

何処かで 感覚が 途切れてるんだ

いや 感覚が 磨滅してしまったわけではないと思うぞ

見目麗しきもの
好ましきもの
美しきもの
人でも 物でも 言葉でも 
そのように感ずることは  あるからね

醜悪なもの
嫌悪感
嘔吐感
そう感ずることだって あるさ

でも ただ それだけで

いつかはわからない 過去の何処かで
やっぱり あたしは 何か 無くしたみたいだ

もしかしたら

今も まだ 無くしつつあるのかもしれないな


そうして あたしは

少しづつ
姿を 変えていくのかもしれないね

不可視の何かを 解き放ちながらさ

いつか 消える日まで

テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/04/05(火) 22:40:07|
  2. 空言

視線



地震で外に避難した時 
私は 揺れる電信柱の向こうに
空を 眺めていた

天災や人災で 地上が 掻き回されて 
海岸線が変動して 何万人も死んで
人間たちが 地べたを這いずり回って それでも生き延びようと足掻き
例えば 私なんかも 瓦礫の中で死にかけて ぼんやり空を眺めているとする

例えば そんなふうになったとしても 
空にはまったく 何の関係もないんだろう

そんなことを 思っていた

いや 空を擬人化したわけではなく 鳥に憧れたわけでもない
ただ 空は素知らぬ顔で 五年前や 十年前や 俺の生まれる前と同じに 
そこに在るんだろう

そんなことを 思っていた

勿論 気象変動もあるだろうし 浮遊物質の内容も変わるだろうが
空そのものにとって そんなことは まったく知ったことではなくて
空は 此処に接しているにも関わらず 此処とは まったくの無関係に まるで別の宇宙のように 隔たったままに
そこに在るんだろう

そして その時 私はそこに 何かの 存在を感じていた
存在?何らかの生命存在に例えることなどできようもない むしろ無機的な “領域” に近い感覚
しかし 私は そこからの 視線を感じてもいた

何処も見てはいない視線

地上に蠢き渦巻く無数の情動
因果の鎖に縛り付けられた無数の事象
それらを完全に素通りしている視線

私の存在など 無に等しいと
強制的に 認識させられる視線

そんな視線を




そして 私は 憧憬していた

その 領域を



そして 私は  感じていた

私が 今 此処に いるという


強烈な 違和感を


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  1. 2011/04/03(日) 17:33:48|
  2. 空言

世界


溢れ出る世界は
止まることを知らない

零れ落ちた世界は
生成消滅を繰り返し
見慣れぬ景色を創り出す

死者は蘇らず
傷口は 縫合されぬままに

拡がっていく
拡がっていく
熱力学の第二法則に従って


踏み出そう
因果律を その指で辿り
共時性を その背に受けて

受け取るべきものを 
受け取るために


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  1. 2011/03/26(土) 19:12:07|
  2. 空言

墓穴



海は満ちて 街を沈め
失くして
流して
思いを 呑み込む


月は満ちて 地球を覗き
照らして
映して
心を 包む


海が あまりにも哀しかったから
月が あまりにも優しかったから

だから あたしは
埋めようのない あたしの墓穴の上を
嘘で 塗り固めて
何処にでもあるような 家を建てたのさ

深過ぎる墓穴が 見えないように
幾重にも 嘘を塗り固めて
その上に 
形だけの 家を建ててみたのさ

道行く人が その家を見て 何と言ったかは知らないが
墓穴の上に 建っているとは 思わなかったろう

あたしも自分で 思わず 忘れそうになっちまったくらいだが
いずれそのうち
そのクソみたいな嘘を踏み抜いて
忘れかけてた 墓穴に
用意されてた 墓穴に
あたしは 転がり落ちるんだろう

海を 流し込んでも 満たされぬ
その墓穴に

月の光に 隠し様もない その墓穴に




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  1. 2011/03/24(木) 18:38:44|
  2. 空言
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