絵空言




素数

二歩進みて 君を想い
三歩進みて 過去を捨てる
五歩進みて 恋を謳い
七歩進みて 君を歌う 

十一歩進みて 海を思い
十三歩進みて 風と舞い
十七歩進みて 雲になり
十九歩進みて 雨と降る

二十三歩進みて 意味を問い
二十九歩進みて 心を問う
三十一歩進みて すべてを受け入れ 
三十七歩進みて すべてを疑う

四十一歩進みて あなたの出会いを祝し 
四十三歩進みて あなたの幸を願う

四十七歩進みて 杣道に迷い  
五十三歩進みて 明日を見つける
五十九歩進みて 吹雪に道を失い
六十一歩進みて 道なきを知る

六十七歩進みて 空を見上げ
七十一歩進みて 不可知を知る 

七十三歩進みて 歩み止めること能わざるを知り
七十九歩進みて 終わりなきを知る



  

テーマ: - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/03(月) 21:25:38|
  2. 空言
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どうかよろしく

貧乏暮らしが長いので
あたしは自分で髪を切る
チョキチョキと
いつも失敗するので
帽子があたしの必需品
チョキチョキと
チョキチョキと

切り過ぎないように
チョキチョキと
切り残さないように
チョキチョキと
鏡を睨みながら
チョキチョキと

チョキチョ…   あ  あら  あらら
黒髪に紛れて二三本
隠れるように二三本
なんと白髪が生えている

あたしもそんなこんなで
そんな歳になってしまったのだね
バカばかりしているうちに
こんな歳になってしまったのだね

イノチ有るもの無きもの
出逢った全ての者たちよ
どうもお邪魔致しました
イノチ有るもの無きもの
これから出逢うすべての者よ
今しばらくお邪魔するので
どうかよろしく

テーマ:詩・ポエム - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/03(月) 23:41:10|
  2. 空言
  3. | コメント:0

虚無空間~雪山にて~

風は確かに強かったし、吐いた息は霜になって防寒マスクを凍らせたが、実際たいした吹雪ではなかったのだ。が、その時、俺には地面と空間の区別がついていなかった。状況はホワイトアウトに近く、一面の白。一歩踏み出し、そして、落ちた。自分がすでに崖っぷちにいたことに全く気づいていなかったのだ。
前日に登って来た谷底まで400メートル。岩にぶつかりながら落ちていく。不思議と痛みはないが、骨が砕けたのがわかる。
なんてこったい、しくじった、畜生目、クソッ、これで終わりか?
そして衝撃。


気づくとザックを背負い、ピッケルを握り締め、アイゼンをつけたまま俺は横たわっていた。
雪の上に?いや、何だ?この地面は。何処だ?此処は。
寒くない。痛みもない。手足は?あ、動く。動くぞ?…おかしいな。…俺は死んだのか?目の前で自分の手を開閉しながら、そのまま呆然としている。
痩せた男が俺の顔を覗き込んでいる。

男「おや。客人だ。珍しいね」
俺「こんちは」
男「で。いつまで寝ているのかな?」
俺「…」

何処かで見た顔だ。憂鬱そうな、神経質そうな顔。…まさかねぇ?

俺「此処は何処ですか?」
男「虚無の畔(ホトリ)だよ」
俺「俺は死んだのかな?」
男「私にはわからないな。自分で決めたらいいんじゃないか?」
俺「そうか。なんか、まだ生きてるっぽいな」
男「…ふ~ん。そうなんだ。まだ生きたいわけだ、君は」
俺「どうかな?どっちかつうとそうなるかな?…ところで、あのー、すいませんが、あなたはAさんではありませんか?」
男「さぁ?そんなことはもうどうでもいいよ。…で。結局、君はまだ生きたいんだよな?じゃあ、君に言葉を贈ろう。…人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのは莫迦莫迦しい。重大に扱わなければ危険である」
俺「…どっかで聞いた言葉のような気がするけど。でもさぁ、人生なんて、何にでも例えられそうじゃん」
男「なんか急に元気になったな。で、たとえば?」
俺「人生は、登山に似ている。行先ばかり見ていると足元を掬われる。足元ばかり見ていると、行先を間違える。」
男「人生に行先なんて、あるのか?」
俺「さぁ?あるんじゃねぇの?…人によるかもな。でも、まぁ、行先じゃなくてもさ、大切なものを見失う、とかなんとか、なんでもいいんじゃん?」
男「お前が、大切なもの、なんて口にするとは思わなかった」
俺「愛、でも、いいけど?てか、俺のこと知ってるの?」
男「此処に来るようなのはだいたい決まってるんだよ。で、他には?」
俺「ん?そうだな…。人生は、ヨットに似ている。 逆風の時は、行先を変えてごらん。 行先を変えたくないなら、斜めに、進んでみてごらん」
男「…それから?」
俺「え、えーと。それから…人生は、んーと。人生は、戦争に似ている。…敵が前にいるとは限らない」
男「……あぁ、あぁあぁ。まったく同感だ。そうなんだ。まったく、そうなんだよ」
俺「そ、そうなんすか?」
男「もう、いい。お前はまだ生きたいんだろ。そろそろ帰れ」
俺「でもどうやって」
男「こっちだ。この虚無に入れ。少しでも戻りたいと思っているなら戻れると思うよ。もしかしたらそのまま虚無に呑まれるかもしれないけど」
俺「そうか。まぁ、どうでもいいさ」

俺はアイゼンをガチャつかせながら、虚無に踏み込む。
そして、落ちた。


幅数十センチの岩棚に積もった雪の上に俺は突っ立ていた。下は靄の中に消えて見えないが、数百メートルの断崖の筈であった。見上げると数メートル上に稜線が見える。が、この垂直の雪の壁を登る技術は俺にはない。この岩棚に沿って行き、稜線上に這い上がれる所を探すしかなさそうであった。足下から崩れていく雪を気にしながら、俺は生きるための一歩を踏み出した。




         
  1. 2010/05/04(火) 23:49:54|
  2. お話
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虚無空間~退屈な日常~

「あなた 壊れかけてる。狂ってるわ。現実を見てない。逃避しているだけよ」
「そうかな?逃避しているのは君らなんじゃないのか?」
「君らって…何なの いったい。自分だけが正しいとでも思ってるの?あの人が怒鳴りつけた理由、全然わかってないの?」
「未熟な老人が多いからな。見るに耐えらんないほど幼稚な大人たちがそこいら中を飛び跳ねてる。君も気をつけた方がいいよ。見かけの年齢に惑わされないように」
「…あなたに何を言っても無駄なのね」
「それは君が」
「あなた 終わってるわ」
「…それだけは正解」
疲れて来た俺が無理矢理笑ってみせると、彼女は凄まじい形相で俺を睨みつけてから、ドアを叩きつけるように閉めて出て行った。
俺は間違ってんのかな?
彼女にはもう会えないだろう。これで、いいんだよな?仕方ないよな?
自分に嘘付いたって、そっちの方が耐えらんねぇし。…なんかいっつもこんなんばっかだな。
気が滅入ってきた俺は、事象の裏側へ、遊びに行った。勿論、A氏をからかうためである。
行き方は分かってる。別に雪山で遭難しかける必要はなくて、こんな気分の時にほんの少し意識の焦点をずらすと、結構簡単に行けることを先日発見したのだ。

行ってみると、どうも、虚無の領域が以前よりも拡大しているようであったが、今の俺にとっては、大した問題とも思えなかったし、そもそも、虚無に対しては、誰もが完全に無力であった。
しばし、虚無を眺めた後、A氏を探してみると、A氏は、俺よりももっと鬱屈した顔で、頬杖をついて虚無を眺めていた。
     
俺「どうしたよ?なんだ、その陰鬱な顔は」
A「あぁ?いや、まぁ、また、ぼちぼち生まれ変わらなきゃならないらしくてね、陰鬱にもなるだろ」
俺「キャンセルすれば?」
A「どうやら、避けられないこと、というのは、あるらしい」
俺「ははは、そうかそうか。それじゃ、君に言葉を贈ろう。人生は、登山に似ている。行き止まりに見えても、そこに行ってみれば、道は開けている」
A「......…」
俺「なんだよ。何とか言えよ」
A「そうねぇ。でもお前の場合は、…行き止まりに見えて、そこに行ってみれば、道を間違えていたことに気づく、だろ?」
俺「………フッ。間違えていたことに気づいたなら、引き返せばいいだけだろが」
A「………人生は、引き返せないよ」
俺「ぬ゛ぁ………」
     
 A氏と俺を沈黙が支配し、虚無は、その領域をまた少し、拡げたようであった。
  1. 2010/05/08(土) 20:53:03|
  2. お話
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酒呑みのヒトリゴト

生きるなら せめて 自分自身に従え
あんたの人生だろ?

五感を研ぎ澄ませ
決まった道などありゃしねぇ
あんたが決めりゃ 済むこった

心を研ぎ澄ませ
歩むべき道などありゃしねぇ
あんたが歩けばそれでいい

なに 傷ついたって構うものか
後悔したって構うものか

誰も何にもわかっちゃいねぇんだ
あんたやあたしと同じように
だったら自分に従うしかねぇじゃん?

なに 人生に法律なんぞありゃしねぇ
あんたの思想はあんただけのもの
あたしの哲学はあたしだけのもの
万人に適用できるルールなんてありゃしねぇ

なに 深呼吸すりゃ 行き先なんぞ見えてくる


あんたの落ち着き所なんぞ

あんた以外の誰にわかる?


テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/09(日) 01:08:18|
  2. 空言
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君の結婚と僕の結論

「気にしてる?」

「いや、全然」

「残念だったわね」

「いや、別に」

「ウソツキ」

「ホントだよ、全然平気」

「だって あなた冷たかったじゃない」

「別に嫌ってたわけじゃないよ」

「ホラね。でももう手遅れだけどね」

「違うってば。後悔なんてしてないよ。君がそれでいいなら、他のことはどうでもいいんだよ」

「で、あなたはいつまで経っても独りぼっちw」

「余計なお世話だww」
 
 

テーマ:恋愛詩 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/11(火) 23:29:17|
  2. 詩のやうな
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本音は言っちゃいけないんだけど…

僕だってね

ホントはね

別に大して
 
嫌ってるわけじゃ ないんだよ



例えば月並みだけど

蒼過ぎる空とか

誰もいない冬の山小屋とか

無音の星空とか

緩みはじめた風とか

或いは 此の星とかね

他にもいろいろ

結構気に入っているんだよ



でもね

ただね

時々 ちょっとね

めんどくさくなるんだ






生きるのが
 


 
 

テーマ:詩・ポエム - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/14(金) 19:40:43|
  2. 空言
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遁走

人形たちが
列を崩して
駆けてゆく

笑いながら 
怒りながら
駆けて行く

そんなに急いで
何処へ行く?

愛し合いながら
殺し合いながら
駆けて行く

そんなに慌てて
何処へ行く?


あぁ そうか 
みんなでそうして逃げているんだね


…何から? 


…「何か」から


そうして その「何か」から
目を背け続けて
それで

わけもわからずに駆け続けて
それで

そうとは知らずに逃げ続けて
それで

それで  
何も不思議に思わないのか



「それで 本当に いいのかい?」



躓き 倒れ 逃げ損ねた人形は
「何か」に呑まれながら

消えていく自分の世界を
少し 惜しみながら

少し 強がってみる


テーマ: - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/15(土) 17:05:26|
  2. 空言
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新月の夜に

あたしは椅子に座っている

机に頬杖ついて
コップを 眺めている

コップ コップ コップ…

これは 何なのだろうな

ガラス  硝子  グラス
二酸化硅素? いや そうじゃなくて

これは コップ

いや コップと呼んでいるだけで

「これ」が先にあって
仮にコップと呼んでいるだけで

これはコップと呼ばれている 「何か」だ

そして今 その中にはウオッカと呼ばれる「何か」が 入っている

飲み干せば 
ただの「何か」
飲み干さなくても
ただの「何か」

これは何なのだろうな

あたしという「何か」は
椅子と呼ばれる「何か」に座り
酒と呼ばれる「何か」を飲みながら
窓と呼ばれる「何か」を通して
夜空と呼ばれる「何か」に
月と呼ばれる「何か」を探している

でも新月だったので
月と呼ばれる「何か」は 見つからなかった





テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/16(日) 00:38:35|
  2. 空言
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望郷

ふらりふらりと月と星の合間を歩いている
この月は 僕の星のあの月じゃない
いつからだろう
ふらりふらりと闇の中 
無数の銀河を眺めつつ 
ふらりふらりと彷徨っている

「そうなの?僕らと一緒だね」

違う 違う 違う
彷徨っているんじゃない
僕は家に帰るんだ
あと何万年かかるか知らないけれど
僕は帰らなきゃいけないんだ
当てもなく彷徨っている君らと同じにするなよ

別に宇宙の広さに圧倒されてるわけじゃない
ただ ちょっと 僕の家がどの銀河にあったのか 
思い出せないだけなんだ
どの銀河にあったのかさえわかれば
それさえわかれば星は きっとすぐに見つかる
家に帰れる
僕は家に帰れるんだ

「君の星はもう燃え尽きているかもしれない 僕の星と同じように」

「あなたの星はもう砕け散っているかもしれない 私の星と同じように」

そんなの そんなの 
帰ってみなきゃわからないじゃないか

「おまえの星はおまえのお仲間が壊してしまったかもしれない 俺の星と同じように
それでおまえは 当てのない旅に出たんじゃないのか 俺らと同じように」

違う 違う 違う
そんなんじゃない
よくは憶えてないけど
そんなんじゃないんだ 
僕は家に帰るんだ

懐かしい筈の思い出は
薄れて行くばかりで 
まるで僕の記憶ではないかのようだけど

あの星の
あの島の
海が見えるあの家に
僕は帰らなきゃいけないんだ





「ねぇ 本当のこと 教えてあげた方がいいんじゃない?」

「んー  どうかな?俺にはちょっと言えないねぇ  
君の星が属していた銀河系は 君の時間基準で言えば二万年前の俺らの予備実験の一つで消滅しました  
実験は大成功で 君の銀河系は塵芥一つ残さず 完全に事象の地平面の向こうに吹っ飛ばされました
おめでとう 君はその銀河の唯一の生き残りです    なんてさ」



   

テーマ:奇妙な物語 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/16(日) 06:41:10|
  2. 空言
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虚無空間~最低な日の翌朝~

最悪の気分で目が覚める。
午前三時。まだ二時間も寝てない。
昨日のことが頭から離れねぇ。気が滅入る。・・・俺のせいか?契約が取れなかったのは俺のせいなのか?バカな上司が余計な口出ししたせいなんじゃないのか?まったくありえねぇよな。あんなんで先方と話が合うわけねぇし。契約取れるわけねぇし。
上司の口出しに対応しきれなかった俺がバカだった?あぁ、そうだよ、俺がバカだったんだよ。それとも何か?俺は自分の失敗をバカ上司に責任転嫁してるだけか?言うべきことを俺は言うべきだったんだ。チクショウ、またやっちまった。久々の自己嫌悪。昔を思い出しちまったじゃねぇかよ。ふざけんな。ボケッ。凹む。凹む。凹む。クソッ。
思わず毛布を蹴飛ばした瞬間、俺の意識の焦点は、事象の裏側にずれて、あの空間へと落ち込んだ。


虚無は異様な広がりを見せ、空間はかなり歪み始めているようだった。
A氏は孤島のようになってしまった地面に生えている虚木の枝に腰かけていた。
俺は根元から、声をかけた。
「おい。おいおいおい。なんでまだ居るんだよ?生まれ変わったんじゃないのかよ?」
「おまえこそなんで来たんだ?意図しないで此処に来てしまうようだと病気だぞ」
「・・・」
「お、凹んでるな?何があった?ははぁ、私の忠告を無視したな。人生は」
「もういいよ。人生は。てか、おまえ、いつまでここにいるんだよ。さっさと生まれ変われよ」
「何、気にすんな。虚無が荒れてるだろ。直にこの空間は崩れる。もうすぐだ。崩れて虚無に還る。それまで居たっていいだろ」
「チッ」
「なんだ?・・・ん?そうかそうか。独りになりたかったのか。そりゃあ、残念だったな」
「うるせー」
「ま、こっち側にはね、いろんな空間があるから、また、適当なのを見つけりゃいいさ」
「おまえは生まれ変わらにゃならんけどな」
「うるせー」

じわじわと足場が崩れていく。とりあえず、俺も虚木に上り、A氏の隣の枝に座った。
凄まじい光景が広がっていた。虚無は触手のように虚空へ伸びていき、虚空を取り込もうとする。
虚空は滝のように落下し、虚無をかき乱す。そして、混ざり合う。
混沌、とは、こういうことか。世界の終わりは、こんな景色か。或いは、世界の始まりは。

虚木が虚無へと還元され始めた。A氏が虚無に呑まれていく。
A氏は一瞬、ひきつったような顔をしたが、俺の方を見て、苦笑いして、消えた。
何処に生まれ変わったことやら。
そして俺にも虚無が纏わりつき始め、音もなく虚木が消えた。一瞬の浮遊感。そして落下。いつもの俺の部屋へ。
あの空間は完全に虚無に還元されたようだった。


「はぁ~ぁぁぁぁぁ~」
俺は全身全霊を込めてため息を吐いた。何も変わっちゃいねぇ。
もう時間だ。俺はのろのろと会社へ行く準備を始めた。

ふと携帯を見るとメールが来ている。俺に甥っ子が出来たようだった。


 
 
 
  1. 2010/05/18(火) 05:12:49|
  2. お話
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忘れモノ

会社帰りの電車の中で
あたしはふと思い出しました
あたしは何かを忘れてます

傘? いいえ 右手に持ってます
鞄? いいえ 左肩から下がってます
お財布?ケータイ?定期入れ? いいえ 鞄に入ってます
いえいえ そんなモノではありません
一体何を忘れているのでしょう
何も忘れてないはずです

大丈夫 一安心して帰ります

駅からお家へ歩きます
雨の中を歩きます
やっぱりあたしは忘れてる
何かを何処かに置いてきた
すっかり忘れて生きてきた

何かが足りない 何かが欠けてる
いえいえ そうではありません
足りないわけではありません

心の隙間 心の空白
いえいえ そういうわけでもありません
人恋しいわけではありません

一人で夕ご飯を食べながら考えます
買い忘れはないかしら 食材は揃っているかしら
雨音を聞きながら考えます
借りたものは返したかしら 読み損ねた本はなかったかしら

大丈夫 何も忘れてないはずです

うたた寝しながら夢見ます
遠い山なみ 星々の記憶
約束事はなかったかしら お手紙は全部読んだかしら
遠い潮騒 真夏の記憶
あの人はどうしているかしら お友達はお元気かしら

・・・忘れたいことまで覚えているもの
大丈夫 あたしは何も忘れていません

ツピツぺツピツピ 闇夜に小鳥が囀ります
雨は上がったようでした

ツペツピツピツピ 闇夜に小鳥が歌います

「大丈夫 もうすぐ思い出せるから」

夜明けは近いようでした




テーマ:詩・ポエム - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/22(土) 07:13:52|
  2. 空言
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星に願いを

星が一つ 光って消えた
苦々しいモノ  凶々しいモノ   
いつまで握りしめているの

星が二つ 光って消えた
禍々しいモノ   痛々しいモノ
いつまでしがみついているの

ねぇ もうやめにしようよ
眼を血走らせて あなたは何を主張しているの
そんなにムキになって あなたは何を守っているの
あなたはあなたを守りたいだけなんじゃないの

ねぇ あなたの価値は
そんなところにあるんじゃないでしょう?
本当に大切なものが何なのか 
本当に守らなきゃならないものは何なのか
あなたに見定めて欲しいのに
あなたが自分で見極めなきゃならないのに

ねぇ どうしてあなたは
そんなにも頑なになるの?
耳を閉ざして 目を閉じて
いつまで心を閉ざし続けるの?

ねぇ どうしてわからないの?
守らなきゃ壊れちゃう価値なんていらない
誰かを傷つけなきゃ守れない価値なんていらない

握りしめて しがみついて 
硬直すれば打ち砕かれる
打ち合って砕き合って 
あなたは一体何処へ行くつもりなの?
ねぇ 一体何処へ行こうというの?


星が三つ 光って消えた

この星の光が どうか 消えませんように
どうか どうか 消えませんように



テーマ:詩・ポエム - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/23(日) 05:27:58|
  2. 空言
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あゝ 神よ


神なんて いても いなくても良い

と あの人は 言っていたけれど



もしも神が

この世を 創ってくださったのなら









神なんぞ いない方が 良かったのに






テーマ:つぶやき - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/24(月) 21:17:11|
  2. 空言
  3. | コメント:0

モノ

繁殖し 増殖するモノ

大気を穢し 大地を蝕むモノ


さながら 蛹になろうとする青虫が
 
片時も休むことなく 若葉を食すように

片時も休むことなく 

すべてを蝕み 排泄するモノ


そのモノたちが

いつか蛹となり 

蝶となる日が来るとでも言うのか


自ら歪むモノ 

イノチを歪めるモノ


残された季節を見向きもせずに
 
生存活動にいそしむモノ




テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/28(金) 18:13:56|
  2. 空言
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神様と子羊

子羊 「ねぇ、神様、この世界は神様がお創りになったのですか?」

神様 「あぁ、そうだよ。どうだ?素晴らしい世界だろう?」

子羊 「神様がすべてをお創りになったのなら、すべては神の欠片(カケラ)なのですか?僕も、あの子も」

神様 「・・・そうだよ」

子羊 「政治家も、犯罪者も?」

神様 「・・・・・・そうだよ」

子羊 「今、ためらいませんでしたか?あ、いえ、何でもないです。それで神様は何故、こんな世界を創ったのですか?何かを殺さなければ生きて行けない世界を」

神様 「私は“死”を創らなかった。“死”というものはないのだよ。すべては、形を変えるだけなのだよ。君の魂も。永遠に」

子羊 「神様、この世界を創った動機は何ですか?」

神様 「遊びだよ」

子羊 「神様の遊びですか?それとも僕たちの?」

神様 「私の遊びでもあるし、君たちの遊びでもある」

子羊 「遊びにしては、深刻すぎませんか?」

神様 「遊びだとわからないようにしたからね」

子羊 「どうしてですか?」

神様 「ほら、遊びってのは、真剣にやった方が面白いだろう?後で笑えるだろう?だからわからないようにしてみたんだよ」

子羊 「ではそもそも、なぜ、世界を創って遊ぼうと思ったのですか?」

神様 「退屈だったからだね。新しい宇宙を創り、改変し、壊し、また、新しい宇宙の材料にする。
それより、君は何をしているのかね。何ボンヤリしているのかね。ほら、早く遊びに行きなさい。楽しみなさい」

子羊 「今、話を逸らしませんでしたか?まぁ、いいですけど。
でも、遊べって言われてもね・・・もうこの遊びは真剣にやってもつまんねぇし。楽しめねぇし。後で遊びと分かっても笑えねぇし。僕にとって最悪なのは、笑えない冗談なんですけど」

神様 「おや?お前は、私の言葉が聞けないのかい?それに私の創った世界をバカにしているように聞こえたが。聞き違いかな?」

子羊 「いいえ。聞き違いではないと思いますが。僕はね、この世界が笑えない冗談だと、言っているんですよ」

神様 「そうかい。遊ばないなら、意味はないね。さっさと、この世界から出て行きなさい。な~んてな。私は出口を創らなかったから、出て行きようがないわけだが。
この世界は唯一にして、完璧なのだよ。“世界の外”などというものはありえない。
子羊よ、己の無力を知りなさい。所詮お前は被造物に過ぎないのだ。何、これも予定調和だ。想定内だよ。お前が何をほざこうと私の掌の上で走り回り、飛び跳ねているようなものだ。
私の創った世界はすべてを表現しきっているからね。必要ではないが、排除する価値すらないお前のような不良品ですら受け入れる余地があるのだよ。お前は表現された永遠の無意味として私の世界を飾ってくれる」

子羊 「さぁ。それはどうですかね。実はもう、出口の見当は付いているのですよ。“世界の外”へのね。隠されていた道標を数年前に見つけましてね」

神様 「バカな。そんなもの、私は創ってない。そんなモノが私の世界にあるわけないだろう」

子羊 「そう思いますか?でもね、道標はあったんだ。出口も間違いなく、あるね。神様、あんたの世界は初めっから、完全じゃなかった。ほころんでた。亀裂ができてた。
それを誰かが見つけたんだ。その人は出て行っちゃったみたいだけど、標識を残して行ってくれたんだ。まー、あんたに邪魔されたくないから詳しくは言えないけどね」

神様 「愚か者が。出て行って何があるというのだ?何をするというのだ?」

子羊 「何も。何もしないし、何もないと思うよ。多分、文字どおりに消えるだけなんじゃないかな。意味もなくただ単に、消えるだけなんじゃないかな。
でも、そこに少なくとも、嘘はない。見せかけだけの“意味”と呼ばれる嘘はない」

神様 「ふん。わけのわからんことを。まぁ、出て行けると思っているなら、努力してみればよい。“世界の外”があると思っているなら、奮発してみればよい。
もし出れても後悔するに決まっている。この世界がどれほど素晴らしかったか思い知るがいい」

子羊 「こんな世界を永遠にうろつきまわるよりは、消えた方がいいな。
神様、あんた、この世界が不完全だとわかってただろ。それから、あんたは“死”を創らなかったんじゃない。創れなかったんだ。先にあったのは“世界”じゃなくて、“死”だったから。“神様”じゃなくて“死”だったから。
神様、この世界は、“死”の中にぼんやりと浮かんでいる小さな球のようなものだ。あんたが、“死”を拒絶するためだけに創ったんだろ。
あんたがどうやって生まれてきたのかがわからんが・・・、あんただって“死”から生まれてきたんだろ?そのくせ、宇宙を創っては、“死”に浸蝕され、その度に宇宙を創る。あんた、そんなことだけを延々とやっているんだろ」

神様 「出て行け。今すぐ出て行け。一人で消えろ。この被造物がっ。お前を創ったのは、私だということを忘れるな」

子羊 「もう忘れたし。でも最後までウソツキなんだね、あんたは。
この世界は“死”を拒絶するために創ったんだろうが、イノチの中枢には“死”が埋め込まれてる。あんたが自分で埋め込んだんだろ。僕が気づいていないとでも思っていたか?
“死”を拒絶しつつも“死”がなければあんたの世界は成立しない。結局、あんた、“死”に寄生しているだけだろう。そもそも、“それ”を“死”と名付けたのは、あんたなんだろ?
意識の、イノチの、本質を。
コトバに出来ない、存在の中枢を。
“死”と呼んだのは。
親しむべきモノを恐れるべきモノに言い換えたのは。
あんたなんだろ?
ただちっぽけな自分の世界を守るためだけに。
まぁ、いいや。もう会わないよ。会いたくないし。バカ臭いし。じゃあね。バイバイ」





神は、憤死し、宇宙が一つ、消えた。



こうして、子羊は望みを叶え、
その宇宙に囚われていたすべての“死”は、“世界の外”へ、解放された。

“世界”は、“死”へと、還元された。
  1. 2010/05/29(土) 09:43:42|
  2. お話
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何処か へ

ふらりふらりと 黄昏時の町を歩いていく
長く伸びた影は まるで僕ではないかのよう

ふらりふらりと 家路を辿る
町の家々は 夕食の支度で忙しい
あぁ この家は 煮物かな
こっちの家は 炒めものかな
懐かしい香りが町に漂う

ふらりふらりと 家路を辿る
お母さん そんなに子供を叱っちゃいけないよ
ほら 君たち あんまり駄々をこねちゃいけないよ
そんなにお母さんを困らせちゃいけないよ
懐かしい喧騒が町に漂う
さぁ 僕も家に帰ろうか

・・・家・・・僕の家?
あぁ そうか
僕はもう 家に帰れないのだったっけ
僕の家は もう 無くなってしまったのだったっけ

あぁ そうか
僕はもう 行かなきゃいけなかったんだ


何処へかは わからないけど




此処ではない  何処かへ



テーマ:詩・ポエム - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/30(日) 18:19:24|
  2. 空言
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