絵空言




雪に想う

雪の降る日には想い出します
世界がまだくっきりと輪郭を保っていた日のことを

善と悪が分かれ
人と獣が分かれ
生と死が分かれていた日のことを

風に舞う雪の中に想い出します
世界が陰陽に分かれて回転していた日のことを

愛と憎が分かれ
理と情が分かれ
天と地が分かれていた日のことを

その背反する二律が世界を世界たらしめていたことを

それはまやかしだったのでしょうか
あれはまぼろしだったのでしょうか

世界は精緻な機械のように
完璧な歯車と化して回っていたはずなのに

何処で狂い始めたのでしょうか
誰が楔を打ち込んだのでしょうか

まるで当たり前のように日は昇り
日は沈み

そうして世界が

渾沌の海に崩れ落ちたのは
いつだったのでしょうか



この果てのない混沌の中に
雪を見る日は想い出します


世界が


まだ


世界だった日のことを


  1. 2014/02/08(土) 13:50:46|
  2. 空言

死と虚無を あなたに

死が空に満ち
虚無が地を埋め尽くす

誰もが視線をそらし
誰もが聞こえないふりをした

だから私は独りで死を叫ぶ

他の誰かの死ではなく
私は私たちの死を叫ぶ

そうして私はあなたに
私たちの死を謳おう


風は死を運び
世界は虚無に覆われる

誰もが嫌な顔をし
誰もが新たな話題を探し始めた

だから私は独りで虚無を語る

机上の空論ではなく
事実としての虚無を語る

そうして私はあなたに
虚無を捧げよう


誰もが立ち去り
私は独り
誰もいなくなるのを待つとしよう



テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/02/14(金) 21:20:17|
  2. 空言