絵空言




とある審議会の定例議事録

ちょっと書いてみた。
前提としてヒトの会話ではないので、非人間的でもあしからず。
読んで不快になる可能性もなくもないのでそのつもりで。

・・・・・・・・・。
辺境領域開発審議会:惑星管理委員会と生物管理委員会を包括する部署。
惑星管理委員会:各惑星における生態系の導入、管理を主な任務とする。
生物管理委員会:各惑星における支配種のルーシュ生産、精製、運用を任務とする。


辺境領域開発審議会(以下、審議会)
「定例議会を始める。優先する議題がある場合は申し出ていただきたい。」

惑星管理委員会
「最近、惑星δ(デルタ)における生態系の崩壊が著しい件を、議題として提出する。」

生物管理委員会
「…異議なし。」

審議会
「了承した。」

惑星管理委員会
「惑星δにおける生態系の加速的崩壊の原因は現生支配種による惑星規模の商工業化であることが明確になっている。
このままでは、惑星規模の緻密な生態系が根本から崩壊し、再構成が著しく困難、若しくは不可能になる恐れがある。
早急に干渉する許可を願いたい。」

審議会
「具体的な干渉内容は。」

惑星管理委員会
「支配種の頭数の大幅な削減を希望する。」

審議会
「惑星δにおける支配種の管理は生物管理委員会の下にあるが。」

生物管理委員会
「確かに現在惑星δの生態系の崩壊は加速度的に進行しているが、δは現在ルーシュの主要生産地であり、頭数削減によりルーシュ生産が決定的に損なわれるのは望ましくない。
生態系の崩壊は、支配種自身をも害する結果になるため、支配種自身に解決させるよう操作することにしたい。」

惑星管理委員会
「それはつまり、支配種を優良化すると?
支配種を劣化させたのは生物管理委員会が極秘に行ったことだと当方は認識しているが。
ルーシュ生産の効率を大幅に上げるため、支配種の知的、感情的能力に干渉し、これらを劣化させ、短絡的思考、視野狭窄、自我肥大に基づく自己中心的性格を強化し、結果、相互破壊能力の向上、居住環境への無関心を生み出した。
我々の調査部門が把握したところでは、生物管理委員会はδ時間10000年前より支配種への干渉を開始し、6000年前までには知的感情的能力の劣化を完了したということだ。」

【人類の知能は2000年~6000年前がピーク説 】
《アメリカ・スタンフォード大学のジェラルド・クラブトリー教授は、人類の知性(知的、感情的能力)が2000~6000年前をピークにして少しづつ低下している可能性があるという研究を発表した。
それによると、狩猟採取生活は一瞬の判断ミスで命取りになるため、知性、感情に安定性があるほど生存できる。
このような自然淘汰によりこの時期最も知性が高い状態であったが、農耕生活により知性、感情の不安定性が生死に直接関係しなくなり、知性は低下の過程にある、と見ている。
つまり、歴史の中で農業や都市が発明され、命が脅かされるリスクが減ったことで、知能の低い人間が淘汰される機会が減ったことが、人類の進化(脳の拡大)を止めた原因だという。
主張によれば、人間は狩猟採集社会として生きてきた時代に進化の99%が終了しているそうだ。
これは脳の大きさの変化で明らかだという。》

生物管理委員会
「・・・・・・・・・。」

惑星管理委員会
「そして生物の優良化は劣化するよりもはるかに困難であるから、今から干渉しても効果が表れ始めるまでに早くても2000年以上かかると推測される。
現在の惑星生態系の崩壊速度からすると100年も維持できないのは明らかであるから、早急な頭数削減以外に方法はないと提言する。」

審議会
「生物管理委員会、異議はありますか。」

生物管理委員会
「…異議なし。」

審議会
「では、削減方法の審議に移りたい。」

生物管理委員会
「核戦争に基づく核汚染でよかろう。その時点で発生が見込まれる大量のルーシュも回収できる。」

惑星管理委員会
「先ほどまでは支配種の優良化を求めていたのに、どういうわけですかね。
核汚染は認められない。結果的に生態系の崩壊までつながりかねない。」

生物管理委員会
「気候寒冷化による食糧削減はどうか。」

惑星管理委員会
「いや、食糧争いから戦争になり、結果、核が使用される可能性が極めて高いため、食糧削減も我々としては認められない。」

生物管理委員会
「いや・・・・・・・・・。」

審議会
「発言は明確に。」

生物管理委員会
「いや、その、つまり…気候変動計画はすでに開始している。
惑星δをルーシュ生産効率の飛躍的上昇の実験地に指定し…」

惑星管理委員会
「その実験地指定は、審議会の許可を受けたものなのか?」

生物管理委員会
「当方としてはそのような許可は必要ないと認識している。」

審議会
「続けて。」

生物管理委員会
「気候変動計画において、惑星δの磁極を調整 したのだが、恒星αとの相互作用によりδの極移動 の可能性が極めて高くなった。」

惑星管理委員会
「我々の許可なしに、…連絡もなしにδの磁極を調整した…だと?」

生物管理委員会
「ルーシュ生産に関する計画は一括して我々の管理下にあると認識している。」

審議会
「その件については、別件として後日改めて審議したい。
つまり生物管理委員会は、ルーシュの生産向上のための実験として気候変動を予定し、結果、極移動の可能性が高まったと。」

惑星管理委員会
「それをごまかすために核汚染を考えたな?
核汚染で支配種を消去して、気候変動計画を極秘裏に葬って極移動の件は感知していないフリをするつもりだったか。
違うか?
優良化を開始したところで、間に合わなかったと嘯いて核汚染で消去するつもりだったんだろう?」

審議会
「憶測で発言しないように。
只今の問題は、惑星δの支配種の処分についてだ。」

生物管理委員会
「現状として、このまま放置した場合の支配種の頭数減少についての我々の予測としては、
戦争及びまたは原発事故による核汚染にのみ基づき削減される可能性は37%。
極移動に基づく気象変動、地殻変動にのみ基づき削減される可能性は24%。
核汚染及び極移動の双方に基づき削減される可能性は31%。
その他、不確定要因として8%。」

惑星管理委員会
「核汚染は惑星生態系の維持を前提とした場合、望ましくない。
核汚染開始以前に頭数削減に着手することが求められる。」

審議会
「ならば第二支配種の導入を提案するが。」

惑星管理委員会
「現支配種との間で核戦争にならないか。」

生物管理委員会
「導入に先駆けて致死性ウイルス を頒布し頭数を減少させておけばよい。
著しい効果があれば第二支配種導入の手間も省ける。」

審議会
「惑星管理委員会、異議はありますか。」

惑星管理委員会
「異議なし。」

審議会
「では以下のように決定する。
惑星δ支配種の削減は惑星δ時間20××年より開始する。
第一段階として、致死性ウイルスの頒布。
第二段階として、第二優勢種の導入。
ただし、第一段階のみで著しい効果が認められた場合、状況推移を確認しつつ第二段階は留保する。
また、第一段階効果発現前に、核汚染及びまたは磁極移動が生じた場合も第二段階には着手せずに状況推移に応じて対応することとする。
なお、最終的に少数の残存が予測される現支配種は、再び惑星生態系を破壊しないように、脳機能を無害に改造するものとする。
改造には非致死性ウイルスを使用する。
このウイルスは遅効性で、最終的な脳機能の完全無害化までに時間がかかるため、支配種削減開始に先駆け、直ちに頒布するものとする。

【「頭を悪くさせるウイルス」に44%の人が感染していたという事実が発覚 】
《感染すると脳の海馬に影響を与え、人間の認識能力を低下させるウイルスの存在が報告されました。
調査では被験者の44%が感染していたこのウイルスの感染経路は不明で、人体には「無害」であるとのこと。》

以上でよろしいか。」

惑星管理委員会
「異議なし。」

生物管理委員会
「…異議なし。」

  1. 2014/11/15(土) 18:00:00|
  2. お話