絵空言 2015年02月

絵空言




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死にゆく者たち

「あのさ、ちょっといいか?」
「あ?」
「なんかさ…変じゃね?」
「何がよ?」
「いや…何がっつーかさ…」
「わけわかんね」

「俺たちさ、いつからこうしてたっけ」
「はぁ?生まれた時からに決まってんだろが」
「まぁ、そうなんだけどさ、よくよく思い出してみるとさ、一度記憶が途切れてんだよね」
「んー、そうだっけか?」
「あー、わかるわかる、一度おかしなことがあって、それから何か変なんだよね」
「そうそう、前にすごく怖いことがあったような気がしてその後記憶がおかしいんだ」
「何だろう?」
「でも…とりあえず不都合ないからこれでいいのかなっと」
「そうだよね」
「わけわかんね」

「俺たちさ、何処に向かってんのかな」
「そりゃーあたしらは旅を続ける宿命だからさ、旅を続けるまでさ。
親父もお袋もそのまた親父もお袋も、ずっと旅を続けてきたんだ。
だからあたしらも旅を続ける。それだけだろ」
「そうなんだけどさ…」
「なんだよ、どうしたんだよ。
行き先なんて決まってるじゃないか。
俺らは季節と共に旅を続ける。
そんなことも忘れちまったとかやめてくれよ?
何か変な気分になることだってあるだろうけどさ、旅を続けるだけだろ?」
「うんうん、そうだよ、私らまだ子供も残してないじゃん。
旅はこれからだよ」
「旅が終わるのは、あたしらが死ぬ時さ。
それまでは終らないよ、絶対に」
「おまいら大げさすぎだろ」

「匂いが変わらない」
「それが何か?」
「いや…昔は季節によって変わったような気がするんだよ」
「確かにな…」

「いつの間にか増えたな…」
「聞いてみたんだよ、あいつらに」
「何を」
「なんで俺たちに合流したのかって」
「で?」
「それがさ、何か混乱している奴ばっかでさ…答になってねぇの」
「うーん…どういうことなんだろう…」

「…やっぱり変だ」
「またおまえか、うるせぇぞ」
「空を見ろよ、空を。
俺たち先に進むことばっかりに気を取られて空なんか見ないけど。
でも見てみろよ」
「はぁ?」
「俺、見たんだよ、空を。狂ってるぞ。
空がないんだ…ちょっと浮上して見て来いよ」
「うわぁああああ、何だこれは、どうなってるんだこれは」
「空だけじゃない、底もおかしい。
いつまでたっても同じままだし…」
「浅すぎる」
「あぁ…やっぱりそうか。僕が狂ってるわけじゃなかったんだ。
気にしないようにしてきたんだけど。
狂ってるのは僕らのいる場所なんだ」
「あたしら、何処に入り込んじまったんだろ…」
「なぁ、これは本当に…旅なのかな」
「やめて!私たちはいままでどおりに旅を続ける、それでいいじゃない!」
「騙されているのかもしれない」
「記憶が途切れた時に何かあったんだろう…」
「捕まって…閉じ込められた?」
「でもあたしたちずっと泳いでるよ?
閉じ込められたら、そんなの無理でしょ。
食べ物だってあるし」
「いや…もしも同じところを廻り続けているとしたら?
食べ物も…与えられているとしたら?」
「そんな…」
「あああぁあ、やっぱりダメだ。両側が壁だよ、これ。
此処は俺らの生まれた場所じゃない。
完全な閉鎖空間だよ、これ。」
「あぁ…なんてこったい…此処は何処なんだよ…」
「俺たちは同じところをぐるぐる廻ってただけなんだ」
「だからおかしかったのね」
「旅でも何でもないじゃんか…」
「悪夢だな」
「あたしらの旅がもう終わってたなら、あたしらの存在理由って…」


「何もないな」



「ごめん。あたしは耐えられない」
「待てよ、まだ決まったわけじゃ、あ、ちくしょう壁に自分の頭叩きつけやがった」
「決まったわけじゃないって、閉じ込められてるのは確かだろう?逃げ出せる見込みがないのも確かだろう?俺も逝くよ」
「おいふざけんなおまえ、おまえが騒ぎ始めたからこうなったんだぞ?逃げるなよ、おい待て…クソが」
「あいつが騒がなくてもいずれみんな気づいたろ。
私もやっぱりこのまま続けるのは無理かな…」
「って、おまいら決断早すぎだろ。
サクサク死んでんじゃねぇよ、ってまた死にやがった」
「ねぇ、なんで死ぬのよ、食べ物あるじゃない。
生きようと思えば生きられるのよ?
ねぇ、死ぬのやめてよお願いだから、死ななくたっていいじゃない!」
「そうなの?此処から生きて出られるとでも思ってるの?絶対的な幽閉の中で生き続けることにどんな意味があるの?」
「意味なんてなくたっていいじゃない!生きていればそれだけでいいのよ!」
「意味というのは、希望なんだよ。
意味の完全な喪失は、完全な絶望なんだ。
意味を失っても生きていられるような奴はね、意味を感じることもないような薄っぺらな生を送ってきた奴と、完全な絶望を通り過ぎてきた奴だけだ。
私はどちらでもないからね。…じゃあ、さようなら」

「知らなかった時は希望に満ちてたのにな。
わかった途端にこれかよ。
状況は何も変わってないのにな」
「おまえ…何か知ってんの?」
「私らを閉じ込めたのは、おそらく陸棲の二足歩行生物だろう。
仲間は奴らに大勢殺されてるね。
私らの閉じ込められた理由は別な処にあるんだと思うが。
たぶん、研究か鑑賞か…
奴らは此処を水槽って呼んでるようだ。
わかったところでどうにもならんけどな」
「ここから抜け出せる可能性はあるのかな?」
「…皆無、かと」
「そうか…知らない方が良かったのかな」
「それはなんとも」
「あぁあぁあぁ、みんな気づいちゃったじゃない、みんな死んでいくじゃない、昨日まではあんなに希望に満ちてたのに。
ねぇ、あなたたちは死なないわよね?わたしだけになるの、イヤよ?」
「おまえはどうすんの?」
「さぁ?」
「なんか死にそびれちまったな…」

・・・・・・・。

「なぁ、俺らは死ぬべきなのかな?」
「そんなことはないだろう」
「生きるべきだと?同じところを延々と回り続けるような、馬鹿げた生を」
「生きねばならないってこともないだろう」
「じゃあ、死んでもいいのかい」
「いいんだろう」
「わたしは生きるべきだと思うわ。
生きている以上は、死が訪れるまで生きる努力をすべきだと思う」
「なら、生きればいいんだろう」
「なんかあなた死んでるみたい」
「どうでもいいさ」
「おいおい、なんで生きる努力をすべきなんだ?
この幽閉が悪夢と同じだとは思わないのか?生きて一体何があるってんだ?
悪夢なら覚めるだけだろ。
生きてんなら死ぬだけじゃねぇか」
「そんなのは生きてみないとわからないじゃない。
わたしは生きるのが好きだし、死ぬのが怖い。
だからみんなみたいには死ねない。
わたしだけになっても、わたしは死ねないと思う」

「意味を失っても生きていられるような奴は、薄っぺらな奴と、完全な絶望を通り越した奴だけだってのはホントかな」
「どうだろうね」
「俺は別に濃く生きてきたつもりはないけどさ、薄っぺらとか言われたらムカつくね」
「図星だと怒るってのはよくある話だ」
「おい、もう一度言ってみろ。
俺が薄っぺらな奴だってのかよ」
「さぁ?」
「ごまかすな」
「他人がどう指摘しようと関係ないだろう。
要は、おまえがおまえをどう思っているかがすべてだろう?
自己欺瞞があろうとなかろうと、おまえにとっては、今思っているおまえがすべてだろう?」
「おまえは薄っぺらとか言われてムカつかないのかよ」
「そいつが誰かに向かって 薄っぺら と言う奴だってことが明らかになっただけじゃないのか。
わざわざムカつくのは労力の無駄だと思うが」
「どうも調子が狂うな…」

「おまえが薄っぺらなのかどうかは知らないが、死んだ奴が絶望に耐えられなかったのは確かだろう…絶望を超えて行けなかったのは確かだろう」
「絶望を超える?この状況で希望を見ろと?何処に希望があるんだよ」
「そんなの生きてみなきゃわからないじゃない」
「おまえは黙ってろ。
いいか?万に一つもこの水槽とやらから抜け出せる見込みはないんだぜ?
わざわざ生きなくたってわかるだろうが。
死ぬまでの飼い殺しだ。
生き続けることにどんな希望がある?」
「希望はない」
「じゃあ何だよ、絶望を超えるってのは」
「希望も超えるということだ」
「は?」
「希望とは想念ではないのか?
その想念が阻害される事が絶望なのではないか?
一切の希望がなければ、一切の絶望はない」

「そんなの卑怯よ、そんなの全然生きてないじゃない、ただの死体じゃない!
生きるってのは希望と絶望の狭間を揺れ動くことでしょう?
希望も絶望もないんだったら、そんなのは生きてるなんて言えないわ!」
「だからさ、今の俺らにはその希望がないんだわ。
だから死の妥当性を考えてんだろうが」
「希望がないとは限らないじゃない!」
「いやいやいや、現実を見ろって」
「希望を待ち続けるのか、絶望に死ぬか、希望も絶望も捨てるのか。
好きにすればいいのだろう」
「やっぱりあなた死んでるようにしか見えないわ」
「私は生きることを語っているわけではないからね。
生の側にいる君から見れば死にも見えるだろう。」
「あなたの言ってることはただの屁理屈よ。
全然理解できない」
「そう見えるなら君にとってはそうなんだろう。
…私には君の言う希望というモノが何なのか全く理解できないが」

「俺は絶望を超えて行けるのかな」
「それはおまえ次第だろう」
「あんたはどうなんだ?」
「さぁ?」

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  1. 2015/02/16(月) 20:34:35|
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