絵空言




本来無一物


わたくしのモノが
わたくしのモノでなくなっていく度に
わたくしというモノは
希薄になっていくようでございました

わたくしというモノが
希薄になればなるほど
わたくしというモノは
楽になっていくようでございました


いいえ そうではございませぬ
手放すわけではありませぬ
捨てるわけでもありませぬ

ただ 意味や目的や 纏わりつく記憶に
わたくしが囚われなくなった時に
わたくしのモノは わたくしから独立するようで

わたくしという意識の領土は
削られて 消えていくようでありました


えぇ 肉体も最近になって 独立運動を始めたようでございます

此の肉体を構成する炭素原子も 
何億年だか何十億年だかの 輪廻の果てに
何の因果か わたくしのようなモノを構成する羽目になっただけでありますから
わたくしといたしましては 引き留める術を持ちませぬ


いずれ思考や記憶も独立していくことでありましょう

彼らが何処より湧き出づるのかすら
知る由もない わたくしといたしましては
やはり 引き留める術を持ちませぬ


いずれ わたくしは領土をすべて失い
元の わたくしに戻るのでございます


何もなかった わたくしに

誰でもなかった わたくしに



えぇ 宇宙の始まる以前の わたくしに





テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/08/04(水) 22:21:08|
  2. 由無事
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