絵空言




月明かりの下で


頬杖ついて考えていた
何か 足りないな

心の辺りに触れてみる

手応えがない

あー そうか  
こないだ自分で取り出して
捨てちまったんだっけ

心の中には 何もなかったから
誰もいなかったから
鎧みたいな   玩具みたいな
そんな 形だけの心は 要らぬとばかりに
あたしは千切って踏み躙って
土に擦り込んでやったんだ

かつて心のあった処に
空いた穴に
手を入れて探ってみる
何もないな

少し悔しかったので
腕まで入れてみる
何もない

不安になったので覗いてみる

真っ暗で 何も見えないね

心の中に いた筈のモノたちは
この穴の何処かにいる筈なんだ

脈絡なく 整合性なく 漂ってる筈なんだ

厚ぼったい 鎧みたいな 心から解き放たれて
まるで無防備に

薄っぺらな 玩具みたいな 心から逃げ出して
まるで自由に

あたしは穴を覗き込んで 目を凝らす
 
あぁ たぶん 遠くに見える あの光がそうなのだな

星のような  星雲のような

もう あたしの手は 届きそうもない

おめでとう
君たちは 心から自由になって
あたしからも自由になったのだね

あたしも君たちから自由になったよ

この埋めようのない空白だけを  抱え込んで



テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/09/22(水) 21:22:49|
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