絵空言 神様と子羊

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神様と子羊

子羊 「ねぇ、神様、この世界は神様がお創りになったのですか?」

神様 「あぁ、そうだよ。どうだ?素晴らしい世界だろう?」

子羊 「神様がすべてをお創りになったのなら、すべては神の欠片(カケラ)なのですか?僕も、あの子も」

神様 「・・・そうだよ」

子羊 「政治家も、犯罪者も?」

神様 「・・・・・・そうだよ」

子羊 「今、ためらいませんでしたか?あ、いえ、何でもないです。それで神様は何故、こんな世界を創ったのですか?何かを殺さなければ生きて行けない世界を」

神様 「私は“死”を創らなかった。“死”というものはないのだよ。すべては、形を変えるだけなのだよ。君の魂も。永遠に」

子羊 「神様、この世界を創った動機は何ですか?」

神様 「遊びだよ」

子羊 「神様の遊びですか?それとも僕たちの?」

神様 「私の遊びでもあるし、君たちの遊びでもある」

子羊 「遊びにしては、深刻すぎませんか?」

神様 「遊びだとわからないようにしたからね」

子羊 「どうしてですか?」

神様 「ほら、遊びってのは、真剣にやった方が面白いだろう?後で笑えるだろう?だからわからないようにしてみたんだよ」

子羊 「ではそもそも、なぜ、世界を創って遊ぼうと思ったのですか?」

神様 「退屈だったからだね。新しい宇宙を創り、改変し、壊し、また、新しい宇宙の材料にする。
それより、君は何をしているのかね。何ボンヤリしているのかね。ほら、早く遊びに行きなさい。楽しみなさい」

子羊 「今、話を逸らしませんでしたか?まぁ、いいですけど。
でも、遊べって言われてもね・・・もうこの遊びは真剣にやってもつまんねぇし。楽しめねぇし。後で遊びと分かっても笑えねぇし。僕にとって最悪なのは、笑えない冗談なんですけど」

神様 「おや?お前は、私の言葉が聞けないのかい?それに私の創った世界をバカにしているように聞こえたが。聞き違いかな?」

子羊 「いいえ。聞き違いではないと思いますが。僕はね、この世界が笑えない冗談だと、言っているんですよ」

神様 「そうかい。遊ばないなら、意味はないね。さっさと、この世界から出て行きなさい。な~んてな。私は出口を創らなかったから、出て行きようがないわけだが。
この世界は唯一にして、完璧なのだよ。“世界の外”などというものはありえない。
子羊よ、己の無力を知りなさい。所詮お前は被造物に過ぎないのだ。何、これも予定調和だ。想定内だよ。お前が何をほざこうと私の掌の上で走り回り、飛び跳ねているようなものだ。
私の創った世界はすべてを表現しきっているからね。必要ではないが、排除する価値すらないお前のような不良品ですら受け入れる余地があるのだよ。お前は表現された永遠の無意味として私の世界を飾ってくれる」

子羊 「さぁ。それはどうですかね。実はもう、出口の見当は付いているのですよ。“世界の外”へのね。隠されていた道標を数年前に見つけましてね」

神様 「バカな。そんなもの、私は創ってない。そんなモノが私の世界にあるわけないだろう」

子羊 「そう思いますか?でもね、道標はあったんだ。出口も間違いなく、あるね。神様、あんたの世界は初めっから、完全じゃなかった。ほころんでた。亀裂ができてた。
それを誰かが見つけたんだ。その人は出て行っちゃったみたいだけど、標識を残して行ってくれたんだ。まー、あんたに邪魔されたくないから詳しくは言えないけどね」

神様 「愚か者が。出て行って何があるというのだ?何をするというのだ?」

子羊 「何も。何もしないし、何もないと思うよ。多分、文字どおりに消えるだけなんじゃないかな。意味もなくただ単に、消えるだけなんじゃないかな。
でも、そこに少なくとも、嘘はない。見せかけだけの“意味”と呼ばれる嘘はない」

神様 「ふん。わけのわからんことを。まぁ、出て行けると思っているなら、努力してみればよい。“世界の外”があると思っているなら、奮発してみればよい。
もし出れても後悔するに決まっている。この世界がどれほど素晴らしかったか思い知るがいい」

子羊 「こんな世界を永遠にうろつきまわるよりは、消えた方がいいな。
神様、あんた、この世界が不完全だとわかってただろ。それから、あんたは“死”を創らなかったんじゃない。創れなかったんだ。先にあったのは“世界”じゃなくて、“死”だったから。“神様”じゃなくて“死”だったから。
神様、この世界は、“死”の中にぼんやりと浮かんでいる小さな球のようなものだ。あんたが、“死”を拒絶するためだけに創ったんだろ。
あんたがどうやって生まれてきたのかがわからんが・・・、あんただって“死”から生まれてきたんだろ?そのくせ、宇宙を創っては、“死”に浸蝕され、その度に宇宙を創る。あんた、そんなことだけを延々とやっているんだろ」

神様 「出て行け。今すぐ出て行け。一人で消えろ。この被造物がっ。お前を創ったのは、私だということを忘れるな」

子羊 「もう忘れたし。でも最後までウソツキなんだね、あんたは。
この世界は“死”を拒絶するために創ったんだろうが、イノチの中枢には“死”が埋め込まれてる。あんたが自分で埋め込んだんだろ。僕が気づいていないとでも思っていたか?
“死”を拒絶しつつも“死”がなければあんたの世界は成立しない。結局、あんた、“死”に寄生しているだけだろう。そもそも、“それ”を“死”と名付けたのは、あんたなんだろ?
意識の、イノチの、本質を。
コトバに出来ない、存在の中枢を。
“死”と呼んだのは。
親しむべきモノを恐れるべきモノに言い換えたのは。
あんたなんだろ?
ただちっぽけな自分の世界を守るためだけに。
まぁ、いいや。もう会わないよ。会いたくないし。バカ臭いし。じゃあね。バイバイ」





神は、憤死し、宇宙が一つ、消えた。



こうして、子羊は望みを叶え、
その宇宙に囚われていたすべての“死”は、“世界の外”へ、解放された。

“世界”は、“死”へと、還元された。
  1. 2010/05/29(土) 09:43:42|
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