絵空言 星   煌めいて    私は

絵空言




星   煌めいて    私は

日も暮れたので 軽く夕食を済ませた後 私は とぼとぼと 裏庭から続く森の中に分け入り いつもの空き地で 夜空を見上げていた
今日は いつになく風が冷たいが まだ 凍り始めてはいない

そこで私が何をしているのかと言えば 勿論 星座を描き 神話を喚び起こすつもりなのだ


季節は過ぎて 星は移ろうのだけれども
何故か私は いつも 星座を描き損ねる
いや 描かれた星座を受け取り損ねると言うべきなのだろうか

誰もが それぞれに星座を描き それぞれの神話を語るものだが
しかし 私には どうしても星座が描けない

星たちは いつだって勝手に ぎらぎら光っているのだ
何の協調性もなく

神話の神々は 闇の中を右往左往して 息絶えていくのだ
何の物語も 紡ぎ出せずに

そもそも それは 私が 描かねばならぬのか  自ずと 描かれるものなのか すら わからない
そんなことすらわからないのならさっさと 諦めてしまえば良さそうなものだが
私には やはり 何か 描かれねばならぬ星座が あったような気が しているのだ
喚び起こされ 語られねばならぬ神話が 確かにあったはずなのだ

そうなのだ   私には どうしても 
その星座と神話に 織り込まなければならぬ 何か ひどく大切なことが あったのだ
それだけは 忘れまいと思っていたことは 覚えているのに
それが何だったのか どうしても思い出せない

だから 星座を描けないのだろうか

何か とても大切な
誰にとって 何故大切なのか
理由も きちんとあったのだが
何一つ 思い出せないのだ

風が 凍り始めてしまう前に
星座は描かれ 神話は語り尽くされねばならぬのに
もう 季節は 凍り始める気配に満ちているというのに

それなのに 私は
まだ 何も  何一つも  描けていないのだ

いつも 森に入り 空き地に転がる大きな石に腰掛けて 星を 漫然と眺め 夜更けに 虚しく家に帰る
そんな日を 一体 どれほど 繰り返せば 気が済むのだろう

焦燥と諦念の狭間で  私は 空回りを続ける


風が 凍り始めたなら
何もかもが 消えてしまうから


星も月も    空も

                                   私も

コトバなど 発する前に 消し飛ばされるから

だから

            せめて


                            風の 凍り始める前に


刻みたいのに



私は





そして 

私は  

今日も

森の中の空き地で 一人 
食い入るように 星を見ている
  1. 2010/12/01(水) 20:51:48|
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