絵空言




お地蔵さん

僕の家から少し歩いた処に 幹線道路があって
その道路傍にお地蔵さんが住んでいます
小さな祠に住んでいます

或る日 僕は 僕がわからなくなったので
お地蔵さんに聞きに行きました
お団子とお茶を供えて 聞きました


地蔵:おっ 団子か 久しぶりだな
しかもお茶まで付いてる ♪
で?ただでもらえるわけじゃないんだろ?
用は何だ?願い事かい?


さっそく お団子に手を伸ばしながら
お地蔵さんが言います


僕:一つ聞きたいんだけどさ
人間には 何ができるのかな?

地蔵:随分 欲張りな質問だな・・・


お茶を一口飲むと
お地蔵さんは一瞬 遠い目をして
続けます


地蔵:まぁ いいか
で 人間に何ができるかって?
そりゃあ いろいろできますぜ
何しろ お月様にまで行っちまったくらいだ

僕:いや まぁ そうなんだけどね
その つまり 僕が聞きたいのは ね
内面的に 人は何ができるのかな と

地蔵:そりゃ ま いろいろできますぜ
何にしろ 繰り返し習慣づければ
人間なんて どうにでも洗脳できる
社会なんざ それで成立しているようなもんさ


お地蔵さんは お団子を頬張りながら もごもご話しています


僕:うーん そういうことでもなくて
てか むしろ そういう洗脳から
自由になれないもんかな?
僕は 本当に 確かなモノを 知りたいんだ

地蔵:さぁ?あまりお勧めはしませんがね
自分を実験台にしていろいろやってみることはできますぜ?
まー 発狂するくらいの覚悟がなきゃ そう遠くまでは行けやしないんだけどね
あっ この団子 うまい
いや なに 簡単なことでさ
ちょいと独りで引き籠もって徹底的に考えてみりゃいいんだよ
んで 自分がそれでも まともだと感じているなら そいつは単に 考え足りないってだけの話でね
あー 狂ったな と感じてきたら 其処ら辺が 入り口かな
勿論 途中でどんなにヤバく感じても クスリは絶対禁止だ 
仮に 発狂したり自殺することになったとしてもね

僕:ちょ・・・ちょっと待った
考えるって ・・・何を?

地蔵:おいおいおい そんなこと聞くくらいなら
君は全然 まったく これっぽっちも こっちに来る必要はないよ
そのままそっちで 悩み 喜び 生きて 死ねばいいさ
自分がわからんならわからんままでよかろうさ
世間の中で右往左往してりゃいいじゃん
それで充分なんじゃないのかい?
わざわざ 俺みたいに バカげた一歩を踏み出す理由なんて
何処にも ありゃしないんじゃないのかい?


お地蔵さんは お茶をずずーっと飲み干して軽く溜め息をつきました


僕:じゃあ 僕は どうすればいいんだよ?僕には何もわからないんだ

地蔵:そんなの知ったことかよ?好きにすりゃいいんじゃねぇの?
そのうち何か見つかるかも知れんし
どう転んでも 悪くてせいぜい何処かで野垂れ死ぬくらいのもんだろ?
たいしたこたねぇじゃん


僕の顔は少し歪んでいたかもしれません


地蔵:まー折角 団子くれたからな
一つくらいは 提案してやろうか

『自分の恐怖を 眺めてごらん』

もしも の話じゃなくてさ
今 其処にある 自分の恐怖を 引き摺り出して 眺めてごらん
眺めるだけでいろいろ変わるもんだよ
出来れば自分の影を全部引き摺り出して虫干ししてみるのがいいんだけどね
まー 君にそれが出来なかったとしても 君の団子が無駄になるだけの話だから 気にするこたないよ
んじゃ ご馳走さん



祠の扉が パタンと 閉じました
僕の未来が一つ パタンと 閉ざされました
いいえ 開かれたのかもしれません
どちらかは わからなかったのだけれど
どうやら僕は まだ 僕から自由になれないままに
この社会の中で生きていかきゃならないようでした







  1. 2011/01/30(日) 12:59:00|
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