絵空言 師匠とその弟子 3

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師匠とその弟子 3

信じることとか、疑うこととか。



「お師匠様、最近私はいろいろあって信じていたものが崩れました。」
「ほうほう、それで?」
「裏切られたような気さえしてきます。」
「バカぢゃの。」
「え゛」
「壊れるようなモノを信じ込んでいたお前がバカぢゃ。」
「な、なにをおっしゃいます、人を信じることがバカだと申されるのですか。お師匠様がそんなことをおっしゃるとは思いもよりませんでした。」
「やっぱりバカぢゃの。」
「……」

「人を信じるのも疑うのもバカぢゃ。」
「疑うのはバカです。疑心暗鬼は何も生みませんから。」
「信じるのはバカです。騙され続けてケツの毛まで抜かれますから。」
「……」

「信じるってのはね、何かを過剰に期待してるってことなんだ。根にあるのは疑いと同じ貪欲さだよ。
疑うのは自分の利益を守ろうとするからだろう?
信じるのは…物理的だったり精神的だったりするけど自分が利益を得ようとしてのことだろう?
どっちにしても中心に在るのは自分の利益だ。だから同じじゃん?」

「…お師匠様は以前、神への信仰を説かれましたね?それはバカぢゃないんですか?」
「バカぢゃないね。神への信仰というのは全面的に委ねること、明け渡すこと、完全に帰依することだ。
利益を考えて信じるなら、それはただの取引だ。信者ではなく商人だ。商品が精神的なものであってもね。」
「では世間には神への信仰なんてほとんどないじゃありませんか。」
「うん。ほとんどないね。宗教関係者の9割9分9厘は商人だよ。商人が悪いとは言わないが、ちっぽけには見えるな。
本当の信仰ってのはね、ヨブのような目にあっても、もっと酷い目にあっても絶対に揺るぎようがないんだ…そういう人もいることはいるだろうけど。」
「そこまで信じて何の利益があるんですか?」
「利益?これだから商人は…」
「あ、質問変えます。なんでそこまで信じられるんですかね?」
「叩きのめされるかして自我の小ささというものをね、本当に実感すればね、んで、神としか呼べない実在を実感すればね、そうせざるを得ないさ。」
「信じようとして信じられるものではないですね。」
「そうだね。信じることと帰依することは全くの別物だよ。だから何も信じなくていいさ。信じたり疑ったりするのは思い込むってことだからね。思い込みは視野を狭くする。」
「明け渡すってことも危険ですよね?」
「そう。それは自己放棄だからね、全面的信頼がないといけない。一ミリでも疑いがあったら無理だ。
そもそも明け渡しは、起きることであって、することではない。もしもそれをするあなたがいるなら、明け渡して満足しているあなたがいるなら、それは偽りだ。」

「…お師匠様は裏切られたことはないのですか?」
「ん?まぁね、だいぶ前に人間関係でがっかりしたことは何度かあったよ。うっわーマジかーなんでこれであんな態度が取れるんよ?みたいな?うん。その時は驚きと吐き気だったかな、感じたのは。裏切られたって意識は全くなかったね。」
「吐き気…ですか…」
「そりゃ不快になってもいいじゃない、人間だもの。」

「一般には、疑うのは悪いことで信じるのはいいことだ、みたいなの、ありますよね。」
「うん。その方が権力者にとっては都合がいいからね。」
「…そ、そうなんすか?でも信じも疑いもしないってのもなんか無理っぼくないですか?」
「んー、まー、ありのままを見ていればいいんだけなんだけどね…そうねぇ、結局、自分が何をどう感じているのかってことが大事なんじゃないのかな、ぶっちゃけ…他人は関係ないんだよ。
信じたり疑ったり裏切られたり、全然たいしたことじゃないんだ…裏切りや幻滅の根にあるのは自分の判断だけだから…それがイヤなら自分自身に気づき続けるしかないんじゃないのかね…」

「私はお師匠様には帰依できそうもありません。もう信じるのもやめました。」
「うん。これからの時代はね、一人ひとりが自分で歩いていかなきゃならない時代だからね。人としての師は必要ないだろう。存在そのもの…認識そのものが師になるだろうから。
そうだね…、存在への明け渡しが起きた時、おまえの、おまえとしての旅も終わるだろう。」




  1. 2014/01/05(日) 20:20:18|
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