絵空言 Memento Mori

絵空言




Memento Mori

私らは世界を語る
目に見える世界を
目に見えぬ世界を
世界の成り立ちを
その構成と歴史を語る

私らはあるべき世界を語る
夢を 理想を 愛を語る

けれども 私らは死を見たろうか

私らは日々愚痴り怨嗟の呻きを上げているかもしれない
日々感謝と優しさと慈しみに満ちているかもしれない

けれども 私らは死を見たろうか
死という私らの双子の片割れを

隣人の死ではなく
親子兄弟の死ではなく
親友や愛人の死ではなく
私らの見ることのできる死は
私ら自身の死のみであることを
私らはどれほど知っているのだろうか

いつだって私らの隣に座っている死の素顔を
私らが本当に覗き込んだことはあったろうか
日常に埋もれ
喜怒哀楽を移ろい
私らは顔を背けてはこなかったろうか
私ら自身の隣に 背後に 目前に 足下に
或いは頭上に
死は常に在ることに
知らぬ振りを続けてはこなかったろうか
私らが私らの作り上げた小さな箱庭の壊れることをただ恐れたがために

私らは私らの死を
どれほど知っているというのだろう
遅かれ早かれ私らは死に抱き取られて死ぬだろう
それでも私らは
死を見知らぬままに過ごすつもりか
死を見知らぬままに死ぬるつもりか

死を見る度合いが
生を見る度合いだと
言ったのは誰だったか

死を見ずに 生を過ぎ行きて
それで 生きたことになるのか
それでも人は死ぬのだから
それでいいと多くの私らは言うのかもしれないけれど
あなたまでがそう言うのか

けれども私は一人 首を傾げる

私らの道標は
虚無ではない
孤独でも 苦でもない
私らの真の道標は

ただ 死 のみであるのに


道標も見ずに
私らは一体 何処へ行こうというのだろう


  1. 2014/06/03(火) 20:17:51|
  2. 空言