年明けに初詣に行くと、混んでる。
なので年末だが初詣に行ってきた。
いや、これでは初詣とは言わないな…
まぁ、とにかく参拝してきた。
多摩川浅間神社。
御祭神は木花咲耶姫命(コノハナサクヤヒメノミコト)。
天気の良い日であったが境内に人影もなく、機械仕掛けの笙の音が淡々と流れている。
機械仕掛けであっても、嫌いじゃないけどね。
で、いつものように手水舎で手を清め、忘れないように先に末社に挨拶した。
順序としては逆なのか?
まぁ、あんまり細かいことに拘る神様でもあるまい…
拝殿に伺うと木花咲耶姫は本殿から出て来られていて何か考え事をしておられるようだった。
「ご機嫌いかがですか、姫神様」
「なんだ、おまえか。何用だ」
「そりゃー勿論、姫神様のご機嫌伺いに」
「ほほぅ、ご機嫌伺いとな。おまえが来たらあたしの機嫌がよくなるとでも思っておるのか」
「いえ、そんな」
「むしろ悪くなるかもしれんな」
「姫、何かあったんですか」
「おまえの知ったことじゃーないんだよ」
「なんかホントに怒ってます?」
「いや」
「とりあえず参拝させてください」
「勝手にしろ」
(えーっと、二礼二拍手一拝っと…)
「いや、ひふみ祝詞は奏上しないでよいぞ」
「あ、姫、先にそれを言われてしまうと」
「おまえのは聞き飽きた」
「じゃあどうすればいいんですか」
「おいおいおい、そんなのは~てめえで考えてくださいなっと」
「はい。
・・・・・・・・・」
「あはははは、沈黙か、無を捧げてくれるのか…ん、これは…違うな…」
「・・・・・・・・・」
「きさまぁ、舐めてんのか?このあたしに虚無を流し込もうなどと100万年早いわ、虚無で遊ぶってのはこうやるんだよ!倍にして返してやろう!」
「ぬぁあああ、くぅう…まさか倍返しにされるとは…頭が割れるぅ…」
「ちっ、下手な芝居はやめろ、この程度の虚無で弾け飛ぶような頭でもないだろうが」
「すみません」
「おまえさぁ、あたしの気を紛らわせてくれようとするのはありがたいけど、無理すんな。
ヒト並みに願い事でもしてさっさと帰れ。
そういやおまえの願い事って聞いたことないな。
たまには願い事でもしてけ。気が向いたら叶えてやらんこともないぞ?ん?金か?出世か?お嫁さんか?おまえに結婚は向いてなさそうだけどな、ははは」
「願い事…ですか。えーっと…んーっと…」
「うお、まぢか。ホントに困ってんのか、おまえ。
前から思ってたけどつくづく変な奴だな…願い事もないのか。何でもいいから適当に言っとけよ」
「う、うむ。じゃあよくわかんないから、神様の御心が為されますように!」
「・・・・・・・。
たまにな…そう願っていく奴がいるが。いいんだな、それで」
「はい」
「ほんとーに、いいんだな?御心の内容は問わないんだな?あたしの勝手にしていいんだな?」
「…はい」
「よーし、よーし、よーし。あたしは念を押したからな。
それでおまえは了承したんだからな。
何が起きようと一切を受け入れるってことだぞ?ふはははははは。それが神を信ずるということぞ。はは、決心がついたぞ。解決解決♪
ん、おまえはもう帰ってよいぞ?」
「はい…」
姫神様は嬉しそうに本殿へと戻って行かれた。
私は一人残されて呆然とする。
ちょっと待て…何が解決なんだ?
そういえば私が来たとき、姫神様は何かお考えになっておられたな…
それが解決したと?
一体、何をお考えになっておられたのか。何の決心がついたのだろう。
境内には相変わらず誰もいない。
空は青く、風は冷たく、世界は何も変わっていない筈だった。
「何が起きようと一切を受け入れるってことだぞ?」
神様の事だから、悪いようにはなさらないだろう…私はそう思う。
ヒトの視線と神様の視線が同じだとは限らないけれども…きっと巡り巡って悪いようにはなさらないだろう…
でも、もしかしたら私はこう願うべきだったのかもしれない。
「今年が平和だったと言われた最後の年になりませんように…」と。
- 2014/12/30(火) 18:00:00|
- お話
-
-