絵空言




君を想ふ

遠く

君に 遠く

この手は届かなくて
指先の触れることも無い
さうして 言の葉の届く事も無く

哀しいくらゐ
遠くに 君を感じてゐる

実はね 
この間 君に 会ひに行かうかと思つたんだ
思つた事がもう 全然僕らしくもなかつたのだけど 
行かうかどうしようかと 迷つてゐたんだ

少し 雨の降つてゐた日だつたと思ふ
僕は あの半端な雨のやうに迷つてゐて
腹を空かせた猫のやうに迷つてゐて

でも どうしても行けなかつた

ダメなんだ
僕は 僕の世界でしか 生きられないから
僕は 君の世界に触れることすら出来ないんだ

君は人の中で 生きていくでせう
其処が君の世界だから

でも僕は人の中では生きていけないから
僕は冷たい虚無の宇宙にしか 生きられないから

だから 君と僕の接点は 何処にもないんだ
幾ら探しても 何処にも全然 ないんだ


この手は届かなくて
指先の触れることも無い
さうして 言の葉の届く事も無く

哀しいくらゐ
遠くに 君を感じてゐる


でも それなのに
それでも少し たぶん気のせいなのだけれど
幽かに少し
君の心が触れたやうな気がしたんだ

たぶん それで 
それだけで 僕には十分なんだ

だから僕は 遠くで君を想つてゐよう

本当は君は 僕に気づいてさへゐないのかもしれない
さうして僕もそのうち 君を忘れてしまふだらう

それでも今は 

遠く 遠くで君を想つてゐよう

  1. 2016/10/01(土) 22:46:35|
  2. 詩のやうな