絵空言




忘れモノ

会社帰りの電車の中で
あたしはふと思い出しました
あたしは何かを忘れてます

傘? いいえ 右手に持ってます
鞄? いいえ 左肩から下がってます
お財布?ケータイ?定期入れ? いいえ 鞄に入ってます
いえいえ そんなモノではありません
一体何を忘れているのでしょう
何も忘れてないはずです

大丈夫 一安心して帰ります

駅からお家へ歩きます
雨の中を歩きます
やっぱりあたしは忘れてる
何かを何処かに置いてきた
すっかり忘れて生きてきた

何かが足りない 何かが欠けてる
いえいえ そうではありません
足りないわけではありません

心の隙間 心の空白
いえいえ そういうわけでもありません
人恋しいわけではありません

一人で夕ご飯を食べながら考えます
買い忘れはないかしら 食材は揃っているかしら
雨音を聞きながら考えます
借りたものは返したかしら 読み損ねた本はなかったかしら

大丈夫 何も忘れてないはずです

うたた寝しながら夢見ます
遠い山なみ 星々の記憶
約束事はなかったかしら お手紙は全部読んだかしら
遠い潮騒 真夏の記憶
あの人はどうしているかしら お友達はお元気かしら

・・・忘れたいことまで覚えているもの
大丈夫 あたしは何も忘れていません

ツピツぺツピツピ 闇夜に小鳥が囀ります
雨は上がったようでした

ツペツピツピツピ 闇夜に小鳥が歌います

「大丈夫 もうすぐ思い出せるから」

夜明けは近いようでした




テーマ:詩・ポエム - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/22(土) 07:13:52|
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