絵空言




僕たちは戦争を始めた

僕たちは戦争を始めた
始まりはいつだって曖昧で
理由を探せばキリがない

僕たちは戦争を始めた
始まりはいつだって誰かが望んだから
他人の迷惑などお構いなしに

やむを得ないんだ誰も望んでないんだとウソを吐き
守るために正義のためにとウソを吐き

すべてを理想のために捧げる狂人たち


僕たちは戦争を始めた まるで当たり前かのように

繰り返される美辞麗句と罵詈雑言
一掃されたのは何だろう?

ラジオの声は冷静だった
…テストではありません ただちに屋内へ避難してください 
30秒以内に都心を中心とする半径…
そこで途切れた

光と轟音 
そして渾沌が始まった  

支配された意思を 
操られた感情を
人々は自分の意思だと思った 自分の感情だと思った

僕たちは戦争を始めた 坂道を転がり落ちるように

疾駆する狂気
暴走する本能
繰り返される殺戮と凌辱
駆逐されたのは何だろう?

報道管制  殲滅  制空権  地上戦   
損害は 負傷者は 死者は?
連鎖する報復  占領者たち 
炎上し潰滅する都市
裏切られた予測  消耗戦   
剥き出しの欲望  暴徒たち 
訪れる飢餓  汚染地域 
海没する都市 

僕たちは戦争を始めた 世界は元には戻らない

取り残された幾らかの人々は
かつての自分たちが
夢のような世界に住んでいたことを知った
一つの時代の終わりを知った
彼等は失ったモノの大きさを嘆き悲しみながら
地上を彷徨した
新しい世界を築くために

忘れ去られた僅かの人々にとっては 何も変わらなかった
世界は相変わらず
不可解なままだった
彼等にしてみれば
光り輝く摩天楼も 放射能塗れの廃墟も
何処までいっても どちらにしても 
ただ単に認識されただけの事象に終始し
ただ単にそれだけのモノでしかなかった
彼等自身の生死ですらも

 
僕たちは戦争を始めた まるでそれが避けられなかったかのように

荒廃する都市と精神
一掃されたのは 夢
駆逐されたのは 希望

僕たちは 僕たちを拒絶した
地球は  僕たちを拒絶した


終焉と沈黙





僕たちは戦争を始めた 


そして 


世界は 静かになった





テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/06/10(木) 19:05:27|
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