絵空言 儚きモノへ

絵空言




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儚きモノへ

ほら 見てよ
僕たちはすごいんだぞ
川を堰き止め森を切り開く
海を埋め立て大地を切り裂く
僕たちはすごいんだぞ
何百メートルもある建物を造れる
何マイルも海を渡っていける 空を越えて行ける
僕たちはすごいんだぞ
岩の中から必要な元素だけを取り出せる
海の底からだって石油を吸い上げる
それがあれば何だって出来る



森の木々が苦笑した
街路樹は冷ややかに沈黙した
叢の虫たちが憫笑した
都会の鴉はちょっと困った顔をした



僕たちはすごいんだぞ
原子の世界も見れるし
宇宙の彼方も見れる
星の軌道も電子の軌道も計算できる
見てよ この素晴らしい原子力発電所
この美しい化学工場
まったくもって僕たちは完璧じゃないか
完全無欠じゃないか
月にまで行ったんだぜ
衛星軌道に基地まであるんだぜ



鳥たちが囁いた

「知らないのだね」
「生きることを」
「他愛ないね」


魚たちが呟いた

「そうだね」
「人間たちは知らないのだね」
「イノチを知らない」
「そうそう」
「知るということを知らない」
「生を知るとは “これ”を生きることだと 知らない」
「何も知らない」


道端の草花が頷いた

「何も知らずに生まれて死んで」
「無邪気なものだね」
「“これ”を知らないから “これ”を生きられない」
「知らないことすら知らないままに」
「儚いね 哀しいね」



ほら   見て見てこの携帯端末   これを支える情報通信システムを考えてごらん
ほら 見てよこの薄いパソコン この大きな飛行機 この途切れない物流システム
ほら この金融システム  僕たちの頭の良さがわかるだろう?
いいかい?僕たちには何だって出来ちゃうんだ
やろうと思えば世界を焼き尽くすことだってね
ほら 見てよ ちゃんと見てよ すごいんだから
この赤外線画像追尾式ミサイル フレアにも誤魔化されない
この自動小銃 ちょっとやそっとゴミが入ってもジャムらない
ねぇ 見てったら 目をそらさないで見てちょうだい
ほらほら この大陸間弾道ミサイル 核弾頭を十個も搭載できるんだよ  こっちの巡航ミサイルは自分で地形を判断して飛ぶんだよ  勿論戦術核搭載可能だ
どうだい?やっぱり僕たちはすごいだろう?



水底(ミナソコ)で珊瑚が囁く

「淋しいね 虚しいね」


風に飛ばされて蜘蛛の子が呟く

「たぶん 人間たちは気づかないだろうな
 土が死んで 風が死んで 山も海もすべてが死んでも」


石の裏側で蛞蝓(ナメクジ)が頷く

「自分たちが死に始めるまでは」




テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/06/16(水) 21:11:54|
  2. 空言
  3. | コメント:0
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