絵空言 空言

絵空言




思い出




机に頬杖ついて ぼんやりしていると
時々 思い出すのです



僕は 一人で 何処かの川を 遡っていて
遥か遠くには 白い山が 見えているのです

いいえ 見えてはいなかったかもしれません

けれども 
辿り着けるのかどうかもわからないほど 遠くに
真っ白な 山が あると 知っているのです

そうして 僕は その山の方へ
川に沿って ひたすら 歩き続けているのです



空は 大地を映し出すほどに
蒼く 透明に 澄み渡っています

やがて 川が 緩やかに 高度を上げて 崖を 削りだす頃
川辺から 崖の上に出る道を 僕は辿るのです

崖の上には 落葉樹の森が広がっているのですが
どの木も 葉を落としていて

けれども 足下に
何かの花が 少しだけ 咲いていたような気がしましたから
もうすぐ 春になるのかもしれません

いいえ
風が 冷たかったから
きっと 秋だったのでしょう



そうして そこに
ポツンと 白い壁の 古びた一軒家があるのです
白い壁が 剥がれかけて 殆んど 灰色になった家が あるのです

二階建てか 三階建てで もう 誰も住んでいないようで
廃屋になっているのかもしれません

僕は その家の前に ぼんやりと 立ち尽くして

そうして 泣いているのです

もう 誰もいなくなってしまった家の前で
僕は 無表情のままに 
懐かしさに 狂いそうになって
泣いているのです







そんな風景が 僕の記憶の底の方に
淀んでいるのです

それは 僕にとっては
どうにも 懐かしい景色なのですが

残念なことに 
その記憶が 何処から来たのか
まるで まったく わからないままなのです

何処かの山の 思い出かとも思ったのですが
どうも 逆のようで 

僕は この記憶を探して
山を歩いていたような そんな気さえ して来るのです

現実に 引き戻された僕には
今の この現実への違和感ばかりが
纏わりついて

そうして また
時間が 過ぎて
僕は この現実に 少しづつ 馴染んでいくのです

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  1. 2011/03/22(火) 19:34:44|
  2. 空言

終わりとか 始まりとか


終わりの始まり?
まだ何も 終わっちゃいないさ

始まりの終わり?
待っても 何も 始まりゃしないさ

すべては変わっていくけれど
何一つ 変わっちゃいないのさ

誰も何も 間違えちゃいない
誰もが 真っ直ぐ 歩くだけ
移ろう景色を 眺めてさ

終わりの始まりの 終わり?
始まりの終わりの 始まり?

終わりも始まりも ありゃしねぇ


  1. 2011/03/20(日) 11:46:47|
  2. 空言

ぼくは 生きてますか?


もしもし?

世界は 壊れかけているのですか?

壊したのは 誰ですか?

きみ ですか?

ぼく ですか?

きみが 何処かで 何か 間違えたせいですか?

ぼくが いつか 何か 間違えたせいですか?

そうして それを

そこで 嗤っているのは きみですか?

ここで 嘲っているのは ぼくですか?





世界は まだまだ 続きますか?

きみの世界は どうですか?



ぼくの世界は  





まだ ありますか?



  1. 2011/03/18(金) 19:52:30|
  2. 空言

朧月夜



春の 匂い

琥珀の 月影

翡翠の 風

この懐かしさに

この虚しさに


私は幽かに 狂い始める


誰にも 気づかれぬように

まるで 品行方正な 

社会人の フリをして


誰もが 誤解するように

時には 浮世離れした

夢追い人の フリをして


私は静かに 狂い続ける


何食わぬ顔をして

話し

歩き

笑い

佇み

空を 見上げ

私は 爆縮する



世界は 剥がれ落ち

境界線は 溶融し

彼岸と此岸は 対消滅する


宇宙は 正気を失い 彷徨い始めた



虚無が 嗤っている




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  1. 2011/03/05(土) 19:51:30|
  2. 空言

無くしたモノは 何だろう?

崩壊する 価値観

瓦礫の中に へたり込んで

雨を 眺めている


大切なモノは 何だろう?

認識された事象が

渾沌に 還元されていく



雨が 降っている

昨日も 降っていた

その前の日も

前の前の日も 降っていた


雨は もう 何年も前から 

ずっと 降っているんだろう

それが 雨なのだと 

僕の気づく ずっと前から

降っているんだろう




僕は

雨の向こう側 が  見たい

それだけ なんだけどな

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  1. 2011/02/21(月) 05:27:59|
  2. 空言

鈍色空は 雪模様




鈍色空に 舞う雪は

ひらひら 踊り 視界を 閉ざす

見上げる僕の 頭ん中は

言の葉 ひらひら 踊り 心に積もる


ああでもない
こうでもない
思考は くるくる 空回り

僕は 何を 伝えたい?
君には 何か 伝わるかい?

あれでもない
これでもない
僕は 何を 探してる?
君は 何か 見つけたかい?

此処にはない
何処にもない
心は 行くあてなくして 途方にくれる


舞い散る雪は

雨になり 霙になり

積ろうか 溶けようか 思案顔


迷ってる?

違う
違う
何かが違う
僕の何かが

探して
探して
思考は くるくる 空回り

僕の言葉に 何がある?
君の力に なれますか?

僕の世界に 何がある?
君の世界に どう映る?

気にしてる?

違う
違う
何かが違う
僕はいつでも 勘違い


鈍色空に 舞う雪は

街を白く 埋めるか 否か 思案顔



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  1. 2011/02/11(金) 12:47:07|
  2. 空言

果て へ


此処が何処だか 知らないが

いつからなのかも 忘れたが

石ころだらけの 平原を

誰かを引き摺り 歩いてる

やたらと蒼い 空の下

やたらと速い 雲の下

草木も見えぬ 地平線

道とも思えぬ 此の道を

何処のどいつか 知らないが

誰かを引き摺り 歩いてる

襟首掴まれ 引き摺られ

幾ら不平を 言おうとも

どんなに不満 だろうとも

手放すわけにも いかぬのだ

道なき道の その先に

遥か彼方の その果てに

まだ見ぬ果てが あるだろう

地平の果てが あるのだろう

何故かは知らぬが おまえをね

其処に棄てねば 気が済まぬ

人里離れて 幾星霜

棄て去るだけの 旅路だが

帰る道なら 失われ

帰るつもりも 喪われ

進むほかには 道もなく

気づけば迫る 黄昏に

いつしか佇む 崖の淵

常闇広がる 神の墓所

星なき淵を 覗き込み

世界の果ては 此処なのか

此処におまえを 棄てるのか

長い旅路を 振り返り

おまえの面を 眺めても

誰かに似ては いるものの

懐かしいとも 思われず

躊躇い一つ 過ぎらずに

力任せに 投げ棄てる

虚空の果てに 放り込む




投げた俺は


  勿論 




               投げられた俺で





あぁ   

       棄てられたのは 




                                 俺であったか





    

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  1. 2011/02/10(木) 19:43:57|
  2. 空言

俺は まだ


いつか 死にたかった俺は
きっと まだ人間を 
生きていた俺なんだろう

いつか 死に場所を探していた俺は
きっと  居場所を
探していた俺なんだろう

俺は 今 何処にいるのですか
少しは 何処かに 近づいたのですか


いつか 錯綜した 思考の迷路を辿っていた俺は
きっと 抜け出せないことを 
知っていた俺なんだろう

いつか 完全な世界を求めていた俺は
きっと それが ただの夢だと
気づいていた俺なんだろう


俺は  何処でもない 此処で
まだ 夢を見ているのですか
どんな夢を 見ているのですか

変わり得ぬ世界を見つめながら
変わり続ける世界に 呑まれて行く夢ですか

必要ないと 嘯きながら
とうの昔に砕けちまった
己の頭蓋骨を 探す夢ですか
欠片を集めれば元通りになるなどと
自分を 欺く 夢ですか


俺は いつまで 夢を
見ていれば いいのですか

いつまで 見ていれば
気が済むのですか


途切れた夢の 合間に
確かに 何かがあった はずなのに

そして 其処にいたのは
俺じゃない 俺だった はずなのに


そんな俺は まだ  

生きているのですか



俺は 

 まだ



存在して  

   いるのですか

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  1. 2011/02/01(火) 21:58:55|
  2. 空言

人生という一日を 夢に見た



夢を 見たよ


夜明けの空気と 

鳥の囀りに 起こされる 夢を


緩い陽射しに戯れる

樹々の ざわめきを聞きながら

あてもなく 彷徨う 夢を


何もわからぬままに 歩き続け

訪れる黄昏を 不思議に 思いながらも

天を満たす 星の海と

果てなき静寂に  

心奪われたまま 

永久(トコシエ)の眠りに 


落ちる 


そんな  夢を







・・・そんな 夢から覚めた僕は 

もう少しだけ 歩こう と 思った

何の あてもなかったけれど



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  1. 2011/01/26(水) 18:58:41|
  2. 空言

無力な 日々


いつからだろう

降りしきる灰の中で 身じろぎもできずに 
移ろう世界を眺めている


日輪は 朧に 天空を過ぎり
幽かな光で 世界を照らしはするが

息するほどに
影は 濃くなり
振り出した手を
踏み出した足を
浸蝕していく

心 ざわめくたびに
灰は 舞い上がり
私に 群がり纏わりつき 
皮膚を破り
骨を齧り
心臓に喰らい付く

その苦痛に 私は思わずたじろぎ 後ずさる

何度も 
何度も 
何度も
踏み出してみては 後ずさる
そんなことを 
繰り返し
繰り返し
繰り返し続けて

やがて 訪れた倦怠と 諦念に 埋もれて

踏み出すことを 忘れた私は
いつまでも
いつまでも
いつまでも
立ち竦んだままに 世界を見ている


人の群れは
灰の彼方より  現れ出でて
傍らを 過ぎては
灰の彼方に  消えて行く

彼方に 何があるのか
私には わからない

私は
届く筈のない手を 
伸ばすことすら できぬままに

一人 
降りしきる灰の中に 立ち尽くしている


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  1. 2011/01/21(金) 19:51:30|
  2. 空言

都市



浮遊する 塵芥

脈打つ 心臓

流れ去る 雲

途切れぬ 雑踏



蒼い 空は


死に 似ている




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  1. 2011/01/15(土) 10:12:14|
  2. 空言

過ぎてゆく


紅葉 散りゆき

吹雪 過ぎゆき

今年も

花は 霞と咲くでしょう

そうして

風は 霞を散らすでしょう


季節も

人も

過ぎゆきて

移ろいゆきて

消えゆきて


イノチは  過ぎて

過ぎて  いくのでしょう


そうして 私も

さらさらと

崩れて

散って

消えてゆくのでしょう


掴めるはずのない 花霞

掴もうと 伸ばした 

その指先から

さらさらと

砂のように

灰のように

塵のように

さらさらと

舞い散る 花弁のように

散りゆきて

消えゆきて

形を 無くし


残った気配は

風が  散らすことでしょう



そうして 風は  

いつまでも 吹き続けることでしょう



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  1. 2011/01/07(金) 20:20:26|
  2. 空言

空回り



この どうでもいい 空の下で

なくした心臓を探しながら

紡ぐ言の葉は  空回り


この どうでもいい 星の上で

言霊 剥がれ落ちて

空疎な言の葉は 上滑り


言霊宿らぬ 言の葉を並べたてて

どうでもいい僕は

頭上のシリウスに遠吠えしてみた




言霊 宿らぬ言の葉は

二階の屋根にも 届きやしない


 

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  1. 2010/12/31(金) 11:44:09|
  2. 空言

その先へ




歩め

歩め

歩め

その先へ


進め

進め

進め

這ってでも


朽ち果てたのは 何だろう

壊れちまったのは 何だろう

何が 腐って

何が 土に還ったのか


何であろうと 知ったコトか


たとえ 身と魂とを 置き去りにする羽目になったとしても

進め

たとえ 不可避の 闇しか見えなかったとしても

進め

そこが光の 終焉だったとしても

進め


進め



進め



 

その先へ



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  1. 2010/12/30(木) 16:59:02|
  2. 空言

そんなはずじゃなかった



破るための 誓い

裏切るための 約束


捨てるために 拾い

絶望するために 希望に縋る


そんな はずじゃなかった


神を 信じたのは

神を 殺すため


そんな つもりじゃなかった


あたしの世界に 巣食う神々を 一掃するため


本当に そんな つもりじゃなかったんだ


神を愛し 

神と語り 

それだけで よかった


それだけで よかったのに

愚かなあたしは

神を問い


神の存在目的を   問い

神の存在価値を   問い

神の存在理由を   問い

問い続け


そうして


     神は


               自ずと



                           狂い






                                               死んでしまった





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  1. 2010/12/23(木) 15:59:06|
  2. 空言

尋ね人



人を 探しているのです

もし 心当たりがあったら

教えてもらえませんか



例えば

隣に 誰か 座っていて 

凍りついた血の気配を感じるのだけど

でも 確かめては いけない

目を 合わせては いけない

そんなことは ありませんか


何もかもが 変わってしまうから

変えられてしまうから

頑なに 前を 見続けていたことは ありませんか



例えば

後ろを 誰か 歩いていて

とても懐かしいのだけど

でも 振り返っては いけない

声を出しては いけない

そんなことは ありませんでしたか


引き返せなくなるから 

二度と 戻れなくなるから 

歯を食い縛って 歩き続けたことは ありませんでしたか



宇宙(ソラ)の 裏側を 覗き込んでしまったような

そんな 誰かの横顔を 

視界の隅に 

捉えたことは  ありませんか



もし そんなことがあったら

僕に 教えてくれませんか

僕の 探している人は そんな 人なのです




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  1. 2010/12/21(火) 21:51:28|
  2. 空言

天気雨



ある日 ふっと 消えればいいな

初めっから 居なかったも同じに
消えればいいな

希薄になって

透きとおって

大気に溶け込むように

ふっと 消えればいいな



天気雨みたいに

降るはずのない 雨みたいに

いるはずのない あたしでいいのに

存在感なんて もういらない

ホントは降らないはずなのに

天邪鬼で ちょっと降ってみただけ

ホントはいないはずなのに

天邪鬼で ちょっと生きてみただけ



ある日 ふっと消えればいいな

気づいたら止んでる 天気雨みたいに



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  1. 2010/12/08(水) 21:02:41|
  2. 空言

静かな 朝



朝焼けの中に

私 が

落ちていた



記憶が 風に押されるようにして 歩いて行った

私 を 置き去りにして


あぁ 記憶の後ろ姿は 儚いな

と 思った


そんな 私 を見捨てて

影は 忍び足で 後退りして行った


私 は それに 気づいてはいたのだけれど

どうすればいいのか わからなかった


思考と感情は 混乱して

それでも暫く 抵抗して 

空に 赤黒く 渦を巻いていたのだが

やがて 諦めたのか   霧のように 消えた

血を 流したような  空に  




あぁ  やっぱり 何にもなれなかったのだな   

私 は




そこはかとなく浮かんだ想いは

すぐに 私 を 捨てて

朝焼けの中に   見えなくなった



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  1. 2010/12/05(日) 18:55:32|
  2. 空言

人や イノチと いったもの




俺は 認めたくないのだが

人を繋ぎ止めているのは

どうやら  人らしい



どうやら  イノチは

イノチが  繋ぎ止めて  いるらしい



まったく

誰かのイノチを 貪り喰って

生き永らえるのが 

イノチなんだろうに


誰かのイノチを 断ち切ってでも

生き残ろうとするのが

イノチなんだろうに


まったく

俺たちが 今までに 喰った

イノチでないものを

数え上げてみたら どうなんだ

俺たちが どれほどの イノチを

貪り喰って

貪り喰って

貪り喰って

喰い散らかしてきたのか


なのに イノチが 

イノチを 繋ぎ止めているとは

一体全体   どうしたことか




俺は

俺が 

人に

繋ぎ止められている

などとは

まったくもって

認めたくないのだ   が



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  1. 2010/12/04(土) 19:27:10|
  2. 空言

詩とは



詩とは 喜び

慈しみ 

舞う言葉


詩とは 嘘     優しい 嘘

初春の  雪に似て



詩とは 怒り 

哀しみ   

虚ろな言葉


詩とは 偽り    冷たい偽り

晩秋の 雨に似て




詩とは  

躍る光    澱む闇

正気と引き換えに遺すもの



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  1. 2010/12/03(金) 19:34:18|
  2. 空言

蒼く 染まる




空が蒼く見える そんな日は

どうにも息苦しいのだ

空があるから それで充分なんだ

生きているから  それで

やがて 死ぬから   それで

それで 充分なんだ

きっと あまりにも充分過ぎるから

だから  苦しいのだ



空が深く見える そんな日には

僕は 溺れる魚のように 窒息する

この 抜け出せない 虚しさの中で



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  1. 2010/11/30(火) 19:08:22|
  2. 空言

響く コトバ



暖かな コトバ

秋の日の 緩い陽射しのような



温かな コトバ

冬の朝の ホットミルクのような



柔らかな コトバ

春に眠る 猫のうなじのような





透きとおる コトバ

夏の風に揺れる 硝子の風鈴のような


或いは

           硝子の

                            剃刀のような



テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/11/28(日) 19:13:43|
  2. 空言

影踏み


日が傾いて 影が伸び
僕はニヤニヤ笑って 影を踏む

浅いね この影  浅過ぎる
あんた 人生何を思って 過ごしてきたの

浅いよ 浅い 
あんたら いい年こいて 今まで一体 何して来たの

何でこんなに浅いのか
溺れることすら 出来やしない



街は黄昏 影は伸び
僕はヘラヘラ笑って 影探す

ヌルいね この影  ヌル過ぎる
幾らカッコつけても
君の人生 先が知れてる

ヌルいよ ヌルい 
路上で 喧嘩してても 
おまえの影は 話にならん

何でこんなにヌルいのか
あってもなくても 同じじゃね?



あちらの影から こちらの影へ
僕はクスクス笑って 影を踏む

おじいさん
あんたの影は いい味出してる
でも 少しばかり 苦痛が足りない

お姉さん
あなたの影は ステキだね
深まるほどに 澄み渡る
でも 僕が融けて消えるには 清澄に過ぎる



残照消えて  影は消え
僕は 影踏み損ねて 
今日も 此の世に 居残りです

いい影 見つかる夢を見て
今宵も 地球の影で 眠ります





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  1. 2010/11/25(木) 22:17:25|
  2. 空言

真似をするのは 無理でした


光の中で 踊り続ける人たちを
あたしは ぼんやり 眺めていたんだ
羨望の眼差しで

光の中で ナイフを振りかざして
取っ組みあって 転げ回っている人たちを
あたしは いつだって 眺めていたんだ
憧憬の眼差しで

殺し合っているのか
愛し合っているのか
あたしには 判別できなかったけれど
そんなのは どっちでもよかった

楽しいのかどうか
そんなことすら わからなかったけれど

ただ あまりにもみんながみんな 
揃いも揃ってそうしているから  
あたしにもできると思った

だから あたしもしばらく 真似をしていたんだ

生きるためには 闘わねばならぬ
絶えざる闘争こそが 生きることである  とかなんとか言って

少なくとも 真似する努力はしてみたんだ

生きることは すべてを愛し 慈しむことだ とかありえないこと言って

ぎこちなく 手足動かしてさ
尤もらしく コトバ紡いでさ


でも 面倒なばかりで
ワケわからなくなるばかりで

結局  
あたしには わからなかったけれど
みんなには わかっているのだろう

あたしには 楽しくなかったけれど
みんなには 楽しいのだろう



生きるということが




でも あたしが それに 付き合わなきゃならない理由は
何処にもないんだよね

振り返れば あたしの影は
もう 充分に 深く広がっていて

振り向きざまに 倒れ込めば
一人で何処までも 堕ちていけるから



あたしはねぇ  

あたしの道を行こうと 思ったんだ





テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/11/23(火) 20:45:04|
  2. 空言

葬送



風の噂に 聞いたけど

どうやら私が 死んだらしい

骨だけ残して 死んだらしい


何か 探していたらしいが

何も 見つけられずに 死んだらしい


誰かを 探していたらしいが

誰にも気づかれずに 死んだらしい


闇に喰われて 死んだらしい

自分から喰われて 死んだらしい


私の骨は 事象の裏の 虚空の果てに

いつまで経っても 散らばったままで あるらしい




骨は いつしか苔むして

小さな花を つけるらしい



テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/11/18(木) 19:33:02|
  2. 空言

寝る前に 死を歌う


月夜に 僕は 一人でね
死を歌ってた
別に 意味なんてないけど
死を歌ってた
音痴だしね  下手くそだけど
屋上に寝転がってね 
僕は一人で 死を歌ってたんだ
馬鹿みたいな 大声でね



死を讃え  死を貶し
死に怯え  死に憧れる
何もかもが 死んでいく



いつまで経っても 懐いてくれない 隣の猫がね
隣の屋根から 呆れてこちらを見てるけど
そんなの知ったコトかい
ますます 君は 僕を警戒するようになるんだろうな きっと
でも そんなの知ったコトかい



死を遊び 愛が消えてく
死に塗れ 愛なんか とっくの昔に忘れてる
死を叫び イノチが消えてく
死を喰い尽くし  生きてるなんて 何の話か わかりゃしない
死に喰い尽くされて 僕は もう何年も前に死んでてさ
死に蝕まれて 錆びた心は 誰かが触れる端から 崩れてく



デタラメにね   歌詞作って
デタラメにね  リズムとって
足 バタつかせてさ
月が ニヤニヤ笑ってるけど 
そんなの知ったコトかい
星に 何か耳打ちしてるけど
でも そんなの知ったコトかい



死を恐れ  死を愛し
死を望み  死を拒む
いいんだよ
みんなが愛を歌うから
僕は 愛を歌わなくても
死を慈しみ  
死を嘆く
構いやしない
みんなが 生きること歌うから
僕が 死を歌っても
死を描き  
死を歌う
僕には 死しか歌えない
生きようとするたびに 僕の何かが壊れてく
死を踊り
死を歌う
僕には 愛が歌えない
愛するたびに  僕の何かが砕けてく
死に狂い  
死を求め
何もかもが 死に塗り潰されて
僕はもう死んでいるから
今更どうして死ねようか?
そうして僕は一人で
死を掴み
死に満ちて
死に堕ちて
死を握り締め

死に 融けて


・・・死が   消える



僕は 馬鹿みたいに歌ってた
隣の猫は うんざりしたようにノビをして お家に帰る
月も呆れて雲隠れ

そろそろ 雨でも降るのかな
さてさて 僕も 部屋に戻ろうか
ぼちぼち 大家もキレるだろう

歌詞も途切れたコトだし
今夜はもう 寝るとするか



テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/11/16(火) 20:45:28|
  2. 空言

離別


弔鐘  鳴りて

友    逝きぬ


風    吹きて

春    訪れぬ


君なき    春に

続く旅路の あては失せ

独り 消えゆく 花霞


テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/11/14(日) 18:32:15|
  2. 空言

自由


自由を夢見て 感じる違和感

何処まで行けば 自由になれる?
何処へ向かって 駆ければよい?

重い足  纏わりつく鎖

この足で 駆けれるはずもない
どうして 遠くへ行けようか

脚に食い込む この足枷は何なのだろう
不可視の鎖は 何処に 結びつけられているのだろう


立ち止まれば 私の影が 囁く



「見定めるがいい その足枷を

手繰り寄せるがいい その鎖を

そして

噛み千切れ  束縛を

喰い千切れ 偽りを

切れぬ鎖なら

砕けぬ足枷なら

己の脚を 引き千切れ」



明日という夢に 結合した 
イノチという名の鎖と足枷は 
私には どうしても壊せなかったので


私は 私の影に 従った


消え失せたのは 何だろう

不可避になったのは 何だろう


自由が消えて   私が失せて

私は少し  自由になった


テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/11/11(木) 19:03:21|
  2. 空言

呼吸



蟲の音 絶えた  この宵闇に

記憶を 吐き出し

闇を 吸う


私を 吐き出し

闇を 吸う


私は 闇に満たされ

闇は  私を喰い尽くす


そこに座しているのは  私の影か
                 
やがて 消える  呼吸の律動

この宵闇には 誰もいない



テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/11/09(火) 20:32:55|
  2. 空言

夜更けの山



星一つ 瞬いて 朧な道を 辿る

雲 湧き出でて  黒き峰々を覆う

足下さえ見えるなら

立ち止まる理由は 何処にもない

星は  まだ   中天で 瞬いている

引き返すつもりは  微塵もない


じきに 夜は 明ける


テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/11/07(日) 19:09:05|
  2. 空言
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