絵空言

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神ノ記

古ニ神アリ
姓ハ 真
名ヲ 無
字ヲ 虚空(うつろ)ト云フ

正伝ニ傳フ処
或時 神 戯レニ 世界ヲ創ル
ソノ数 三千ト云フ
異聞アリテ
世界ノ数 三億トモ無数トモ傳フ

神ハ世界ニ生命(いのち)ヲ創リ 自由ヲ与ヘ
見守リ 哀シミ 慈シンダト云フ

マタ異端ノ書ニ傳フ
神ハ神二飽イテ 自身ヲ世界二変エタト
神ハ神自身ヲ忘却シ
世界ノ内ニ 生命(いのち)トシテ棲ミタリ

世界ニ飽イタ者
倦ンダ者
世界ヲ厭ウタ者
再ビ神ヲ想起シ 神ニ回帰シタト云フ

(まこと)ノ処ハ 定カナラズ




  1. 2015/12/14(月) 19:00:30|
  2. 空言

雲海

雲の下に何があるのかなどと
雲の下で何が起きているのかなどと
思い煩う必要はない

ただ 雲の上 遥か彼方に
星々を見上げることさえ出来るなら


何故なれば おまえの住処は
もはや下界にはないのだから

  1. 2015/12/12(土) 21:57:08|
  2. 詩想

永劫回帰

進めども進めども 何処へも行けぬ

歩めども歩めども 何処へも着けぬ

私たちは回し車の中を駆け続ける鼠のやうで

いつまでもいつまでも まるで何処かへ行けるつもりで

何処までも何処までも 進んでゐるつもりで

走り続けて走り続けて 草臥れ果てて

私たちは…

  1. 2015/12/12(土) 21:52:57|
  2. 空言

虚無へ

みんなは遊びで忙しい
みんなは政治で騒がしい
みんなは仕事で慌ただしい

だから僕は
一人で 虚無を覗いていよう
此の漆黒を 凝視していよう


誰もが移ろう世界に夢中だから
誰もが消えゆく世界に真剣だから
誰もが僕を忘れるだろう

だから僕は
一人で 虚無に踏み込もう
此の深淵に
光を遠く 後にして
静かに
静かに
身を沈めていこう

深く

深く


深く…


  1. 2015/12/12(土) 21:41:37|
  2. 詩想

無力





季節は過ぎて 行くけれど
私は独り 為す術もなく
独り 佇み
独り 空を見上げ

独り 消える

  1. 2015/12/12(土) 21:23:43|
  2. 空言

夢現

僕たちは 相変わらずに
生きているつもりになっているけれど
もしかしたら僕たちはもう
滅びてしまったのかもしれません

いつまでたっても
戦争とか平和とか
理想とか現実とか
何だかバカみたいに煩いけれど
煩いばかりで現実は何も変わらずに
僕たちはもう
為す術もなく滅びてしまったのかもしれません

これら全ては
その死の刹那に僕らの脳が構築した 儚い夢で
誰もがみんな 同じ世界だと思って見ている拙い夢で

地球は もう何年も前に
隕石の衝突で
地軸の逆転で
巨大地震と破局噴火で
火と水によって清められたのかもしれません

これら全ては
燃え盛る炎の中で
渦巻く黒い水の中で
その死の間際に
僕らの見ている夢なのかもしれません

ならば次の瞬間 
気づけば僕らは地獄の中で死ぬのでしょう


けれども それを言うなら
僕は数年前のあの日
あの雪の谷に 滑落したのかもしれません

吹き溜まりに引っかからずに
そのまま数百メートル下の谷底まで
岩にぶつかりながら
雪を散らせながら
身を砕きながら
落ちて行ったのかもしれません

ならば今の僕は
谷底で死につつある僕の見ている夢なのでしょう
この数年の 出会いも別れも
喜びも後悔も この泡盛も
何もかもが 夢だったのでしょう

ふと気づけば僕は
雪に半ば埋もれ 感覚の消えゆく動かぬ体と 頬に感じる雪の冷たさに不釣り合いを感じながら
舞い散る雪の彼方に 黒々とした遥かな岸壁をぼんやりと見上げているだけなのかもしれません




もしもそうだとしたならば

なんて素敵なことでしょう・・・

  1. 2015/09/09(水) 07:19:39|
  2. 戯言

酒肴

ゆるゆると 死んでいこう
酒に酔いながら

ゆるゆると 生きていこう
山を歩きながら

もう何もかもが 知ったことでは無い
三歳苦難も 過ぎ行く景色
ミロクの世も 酒の肴

全てはただ こういうもので あるのだと

宇宙の明滅は 神の呼吸のような
知る人もなく 全てを包む
  1. 2015/06/16(火) 21:45:39|
  2. 詩想

言の葉

私の言葉は
誰かに届いたろうか

書き散らかされた
私の言葉は
誰かの心に 触れたろうか

過ぎ去り行く人波の中に
溶けて消えた 私の言葉が
見知らぬ誰かの心に
いつか芽吹くとでも言うのだろうか

言の葉 散りゆき
私は独り 立ち去りて

  1. 2015/06/16(火) 21:44:29|
  2. 空言

うつろ

虚ろなままに 生を往き
己が何かもわからずに
世界を知れるわけもなく
ゆえに世界を問うのはやめにして
虚ろなままに 言葉を紡ぎ
己を問うてはみたけれど
虚ろなモノは 虚ろなままで
カラカラと 心は虚ろに空回り

いつかの夢に 神を見て
虚ろなままに 神を問い
答のないのが答だと
思い知らされ 項垂(うなだ)れて
虚ろなままに 溜息を吐く

生と呼ばれているこれが
何であるかは知らないが
地上と呼ばれるこの世界
いつまでいなけりゃならぬのか
今此処で
無何有の地へと 
消えてしまえばいいものを
  1. 2015/06/16(火) 21:43:30|
  2. 空言

詩が書けない

今日も一日 詩が書けない
浮かんだ言葉は空中分解
頭の中はガラクタ一杯

気分一新散歩に出ても
いつもの景色はいつものままで
ガラクタ頭に風が素通り

いつもの公園
いつもの池には
鯉にボートに家族連れ
早咲き桜を眺めても
空っぽ心に響かない

とぼとぼ歩いて帰り道
首を傾(かし)げて帰り道
無理やり言葉を捻っても
頭も心も知らん顔

映る世界を言葉にしても
それではただの説明で
やっぱり今日も一日 詩が書けない
  1. 2015/06/16(火) 21:42:36|
  2. 空言

生死の分別

あぁ 今日は何だか知らんが死にたい気分だ
何が何でも死にたい気分だ
でも自分で死ぬのも面倒だから
死神探すが見つかりゃしない

あぁ 今日は四の五の言わずに死にたい気分だ
滅多矢鱈に死にたい気分だ
困ったもんだが死にたいんだから仕方ない
思い残すことなんてありゃしない
あははと笑って死にたいもんだ

罰当たり?卑怯者?
首を切られるのやイヤだけれど
それでもやっぱり死にたいもんだ
何もかもが絶望通り越してバカバカしくて
面倒なばかりで何も実らない
俺は何をやっているのかと
自問すればするほど死にたくもなるさ

あぁ死ねないくせに死にたくて
死にたいけれど死ねなくて
いやはやどうにも死ねぬと分かっているから
ますます困る
ならば
さっさと生きる覚悟を決めりゃいいのに
いやはやどうにも死神探しをやめられない

生きるに生きれず死ぬに死ねぬ
生死の狭間の泥濘で
もがいてあがいてジタバタしても
やっぱりどうにも
生きるに生きれず死ぬに死ねぬ

はてさてどうしたものか考えあぐねて茫然自失

「もしも幽かにでも死にたいのなら
或いは生きたいのなら
そこには生死の分別がある

それを覚えておくように」

あぁ なんだよ
数日前に自分で書いたメモじゃねぇか
答は出てるじゃねぇか

生死の分別を落とせってさ…
  1. 2015/06/16(火) 21:41:32|
  2. 詩想

死にゆく者たち

「あのさ、ちょっといいか?」
「あ?」
「なんかさ…変じゃね?」
「何がよ?」
「いや…何がっつーかさ…」
「わけわかんね」

「俺たちさ、いつからこうしてたっけ」
「はぁ?生まれた時からに決まってんだろが」
「まぁ、そうなんだけどさ、よくよく思い出してみるとさ、一度記憶が途切れてんだよね」
「んー、そうだっけか?」
「あー、わかるわかる、一度おかしなことがあって、それから何か変なんだよね」
「そうそう、前にすごく怖いことがあったような気がしてその後記憶がおかしいんだ」
「何だろう?」
「でも…とりあえず不都合ないからこれでいいのかなっと」
「そうだよね」
「わけわかんね」

「俺たちさ、何処に向かってんのかな」
「そりゃーあたしらは旅を続ける宿命だからさ、旅を続けるまでさ。
親父もお袋もそのまた親父もお袋も、ずっと旅を続けてきたんだ。
だからあたしらも旅を続ける。それだけだろ」
「そうなんだけどさ…」
「なんだよ、どうしたんだよ。
行き先なんて決まってるじゃないか。
俺らは季節と共に旅を続ける。
そんなことも忘れちまったとかやめてくれよ?
何か変な気分になることだってあるだろうけどさ、旅を続けるだけだろ?」
「うんうん、そうだよ、私らまだ子供も残してないじゃん。
旅はこれからだよ」
「旅が終わるのは、あたしらが死ぬ時さ。
それまでは終らないよ、絶対に」
「おまいら大げさすぎだろ」

「匂いが変わらない」
「それが何か?」
「いや…昔は季節によって変わったような気がするんだよ」
「確かにな…」

「いつの間にか増えたな…」
「聞いてみたんだよ、あいつらに」
「何を」
「なんで俺たちに合流したのかって」
「で?」
「それがさ、何か混乱している奴ばっかでさ…答になってねぇの」
「うーん…どういうことなんだろう…」

「…やっぱり変だ」
「またおまえか、うるせぇぞ」
「空を見ろよ、空を。
俺たち先に進むことばっかりに気を取られて空なんか見ないけど。
でも見てみろよ」
「はぁ?」
「俺、見たんだよ、空を。狂ってるぞ。
空がないんだ…ちょっと浮上して見て来いよ」
「うわぁああああ、何だこれは、どうなってるんだこれは」
「空だけじゃない、底もおかしい。
いつまでたっても同じままだし…」
「浅すぎる」
「あぁ…やっぱりそうか。僕が狂ってるわけじゃなかったんだ。
気にしないようにしてきたんだけど。
狂ってるのは僕らのいる場所なんだ」
「あたしら、何処に入り込んじまったんだろ…」
「なぁ、これは本当に…旅なのかな」
「やめて!私たちはいままでどおりに旅を続ける、それでいいじゃない!」
「騙されているのかもしれない」
「記憶が途切れた時に何かあったんだろう…」
「捕まって…閉じ込められた?」
「でもあたしたちずっと泳いでるよ?
閉じ込められたら、そんなの無理でしょ。
食べ物だってあるし」
「いや…もしも同じところを廻り続けているとしたら?
食べ物も…与えられているとしたら?」
「そんな…」
「あああぁあ、やっぱりダメだ。両側が壁だよ、これ。
此処は俺らの生まれた場所じゃない。
完全な閉鎖空間だよ、これ。」
「あぁ…なんてこったい…此処は何処なんだよ…」
「俺たちは同じところをぐるぐる廻ってただけなんだ」
「だからおかしかったのね」
「旅でも何でもないじゃんか…」
「悪夢だな」
「あたしらの旅がもう終わってたなら、あたしらの存在理由って…」


「何もないな」



「ごめん。あたしは耐えられない」
「待てよ、まだ決まったわけじゃ、あ、ちくしょう壁に自分の頭叩きつけやがった」
「決まったわけじゃないって、閉じ込められてるのは確かだろう?逃げ出せる見込みがないのも確かだろう?俺も逝くよ」
「おいふざけんなおまえ、おまえが騒ぎ始めたからこうなったんだぞ?逃げるなよ、おい待て…クソが」
「あいつが騒がなくてもいずれみんな気づいたろ。
私もやっぱりこのまま続けるのは無理かな…」
「って、おまいら決断早すぎだろ。
サクサク死んでんじゃねぇよ、ってまた死にやがった」
「ねぇ、なんで死ぬのよ、食べ物あるじゃない。
生きようと思えば生きられるのよ?
ねぇ、死ぬのやめてよお願いだから、死ななくたっていいじゃない!」
「そうなの?此処から生きて出られるとでも思ってるの?絶対的な幽閉の中で生き続けることにどんな意味があるの?」
「意味なんてなくたっていいじゃない!生きていればそれだけでいいのよ!」
「意味というのは、希望なんだよ。
意味の完全な喪失は、完全な絶望なんだ。
意味を失っても生きていられるような奴はね、意味を感じることもないような薄っぺらな生を送ってきた奴と、完全な絶望を通り過ぎてきた奴だけだ。
私はどちらでもないからね。…じゃあ、さようなら」

「知らなかった時は希望に満ちてたのにな。
わかった途端にこれかよ。
状況は何も変わってないのにな」
「おまえ…何か知ってんの?」
「私らを閉じ込めたのは、おそらく陸棲の二足歩行生物だろう。
仲間は奴らに大勢殺されてるね。
私らの閉じ込められた理由は別な処にあるんだと思うが。
たぶん、研究か鑑賞か…
奴らは此処を水槽って呼んでるようだ。
わかったところでどうにもならんけどな」
「ここから抜け出せる可能性はあるのかな?」
「…皆無、かと」
「そうか…知らない方が良かったのかな」
「それはなんとも」
「あぁあぁあぁ、みんな気づいちゃったじゃない、みんな死んでいくじゃない、昨日まではあんなに希望に満ちてたのに。
ねぇ、あなたたちは死なないわよね?わたしだけになるの、イヤよ?」
「おまえはどうすんの?」
「さぁ?」
「なんか死にそびれちまったな…」

・・・・・・・。

「なぁ、俺らは死ぬべきなのかな?」
「そんなことはないだろう」
「生きるべきだと?同じところを延々と回り続けるような、馬鹿げた生を」
「生きねばならないってこともないだろう」
「じゃあ、死んでもいいのかい」
「いいんだろう」
「わたしは生きるべきだと思うわ。
生きている以上は、死が訪れるまで生きる努力をすべきだと思う」
「なら、生きればいいんだろう」
「なんかあなた死んでるみたい」
「どうでもいいさ」
「おいおい、なんで生きる努力をすべきなんだ?
この幽閉が悪夢と同じだとは思わないのか?生きて一体何があるってんだ?
悪夢なら覚めるだけだろ。
生きてんなら死ぬだけじゃねぇか」
「そんなのは生きてみないとわからないじゃない。
わたしは生きるのが好きだし、死ぬのが怖い。
だからみんなみたいには死ねない。
わたしだけになっても、わたしは死ねないと思う」

「意味を失っても生きていられるような奴は、薄っぺらな奴と、完全な絶望を通り越した奴だけだってのはホントかな」
「どうだろうね」
「俺は別に濃く生きてきたつもりはないけどさ、薄っぺらとか言われたらムカつくね」
「図星だと怒るってのはよくある話だ」
「おい、もう一度言ってみろ。
俺が薄っぺらな奴だってのかよ」
「さぁ?」
「ごまかすな」
「他人がどう指摘しようと関係ないだろう。
要は、おまえがおまえをどう思っているかがすべてだろう?
自己欺瞞があろうとなかろうと、おまえにとっては、今思っているおまえがすべてだろう?」
「おまえは薄っぺらとか言われてムカつかないのかよ」
「そいつが誰かに向かって 薄っぺら と言う奴だってことが明らかになっただけじゃないのか。
わざわざムカつくのは労力の無駄だと思うが」
「どうも調子が狂うな…」

「おまえが薄っぺらなのかどうかは知らないが、死んだ奴が絶望に耐えられなかったのは確かだろう…絶望を超えて行けなかったのは確かだろう」
「絶望を超える?この状況で希望を見ろと?何処に希望があるんだよ」
「そんなの生きてみなきゃわからないじゃない」
「おまえは黙ってろ。
いいか?万に一つもこの水槽とやらから抜け出せる見込みはないんだぜ?
わざわざ生きなくたってわかるだろうが。
死ぬまでの飼い殺しだ。
生き続けることにどんな希望がある?」
「希望はない」
「じゃあ何だよ、絶望を超えるってのは」
「希望も超えるということだ」
「は?」
「希望とは想念ではないのか?
その想念が阻害される事が絶望なのではないか?
一切の希望がなければ、一切の絶望はない」

「そんなの卑怯よ、そんなの全然生きてないじゃない、ただの死体じゃない!
生きるってのは希望と絶望の狭間を揺れ動くことでしょう?
希望も絶望もないんだったら、そんなのは生きてるなんて言えないわ!」
「だからさ、今の俺らにはその希望がないんだわ。
だから死の妥当性を考えてんだろうが」
「希望がないとは限らないじゃない!」
「いやいやいや、現実を見ろって」
「希望を待ち続けるのか、絶望に死ぬか、希望も絶望も捨てるのか。
好きにすればいいのだろう」
「やっぱりあなた死んでるようにしか見えないわ」
「私は生きることを語っているわけではないからね。
生の側にいる君から見れば死にも見えるだろう。」
「あなたの言ってることはただの屁理屈よ。
全然理解できない」
「そう見えるなら君にとってはそうなんだろう。
…私には君の言う希望というモノが何なのか全く理解できないが」

「俺は絶望を超えて行けるのかな」
「それはおまえ次第だろう」
「あんたはどうなんだ?」
「さぁ?」

  1. 2015/02/16(月) 20:34:35|
  2. お話

死と呼ばれる この深淵に

死を眺めていた
遠く遠くに 死を眺めていた
そう 思っていたのに

気づくと
死を覗き込んでいた
手を伸ばせば触れられそうな 深淵を
言葉もなく
覗き込んでいた

生が色褪せ 遠くなってゆく

私に遠かったのは
死ではなくて 生でした

「死にたいのかい?」

いいえ 私はただ
死と呼ばれるこの深淵に 触れていたいだけなのです

  1. 2015/01/26(月) 21:41:45|
  2. 空言

死ぬるほどに 蒼い空

空は 蒼く 透き通り
光は 煌めき 水面(みなも)に踊る

人は 群れて戯れ 過ぎてゆき
僕は 虚ろに 立ち尽くす

風が 滅びを 告げに来て
僕の 全てを 消してゆく

空は 蒼く 澄み渡り
神は 微笑み 世界は続く


テーマ: - ジャンル:小説・文学

  1. 2015/01/18(日) 19:43:58|
  2. 詩のやうな

年末の木花咲耶姫命

年明けに初詣に行くと、混んでる。
なので年末だが初詣に行ってきた。
いや、これでは初詣とは言わないな…
まぁ、とにかく参拝してきた。

多摩川浅間神社。
御祭神は木花咲耶姫命(コノハナサクヤヒメノミコト)。
天気の良い日であったが境内に人影もなく、機械仕掛けの笙の音が淡々と流れている。
機械仕掛けであっても、嫌いじゃないけどね。
で、いつものように手水舎で手を清め、忘れないように先に末社に挨拶した。
順序としては逆なのか?
まぁ、あんまり細かいことに拘る神様でもあるまい…


拝殿に伺うと木花咲耶姫は本殿から出て来られていて何か考え事をしておられるようだった。

「ご機嫌いかがですか、姫神様」
「なんだ、おまえか。何用だ」
「そりゃー勿論、姫神様のご機嫌伺いに」
「ほほぅ、ご機嫌伺いとな。おまえが来たらあたしの機嫌がよくなるとでも思っておるのか」
「いえ、そんな」
「むしろ悪くなるかもしれんな」
「姫、何かあったんですか」
「おまえの知ったことじゃーないんだよ」
「なんかホントに怒ってます?」
「いや」
「とりあえず参拝させてください」
「勝手にしろ」

(えーっと、二礼二拍手一拝っと…)

「いや、ひふみ祝詞は奏上しないでよいぞ」
「あ、姫、先にそれを言われてしまうと」
「おまえのは聞き飽きた」
「じゃあどうすればいいんですか」
「おいおいおい、そんなのは~てめえで考えてくださいなっと」
「はい。
 ・・・・・・・・・」
「あはははは、沈黙か、無を捧げてくれるのか…ん、これは…違うな…」
「・・・・・・・・・」
「きさまぁ、舐めてんのか?このあたしに虚無を流し込もうなどと100万年早いわ、虚無で遊ぶってのはこうやるんだよ!倍にして返してやろう!」
「ぬぁあああ、くぅう…まさか倍返しにされるとは…頭が割れるぅ…」
「ちっ、下手な芝居はやめろ、この程度の虚無で弾け飛ぶような頭でもないだろうが」
「すみません」

「おまえさぁ、あたしの気を紛らわせてくれようとするのはありがたいけど、無理すんな。
ヒト並みに願い事でもしてさっさと帰れ。
そういやおまえの願い事って聞いたことないな。
たまには願い事でもしてけ。気が向いたら叶えてやらんこともないぞ?ん?金か?出世か?お嫁さんか?おまえに結婚は向いてなさそうだけどな、ははは」
「願い事…ですか。えーっと…んーっと…」
「うお、まぢか。ホントに困ってんのか、おまえ。
前から思ってたけどつくづく変な奴だな…願い事もないのか。何でもいいから適当に言っとけよ」
「う、うむ。じゃあよくわかんないから、神様の御心が為されますように!」
「・・・・・・・。
たまにな…そう願っていく奴がいるが。いいんだな、それで」
「はい」
「ほんとーに、いいんだな?御心の内容は問わないんだな?あたしの勝手にしていいんだな?」
「…はい」
「よーし、よーし、よーし。あたしは念を押したからな。
それでおまえは了承したんだからな。
何が起きようと一切を受け入れるってことだぞ?ふはははははは。それが神を信ずるということぞ。はは、決心がついたぞ。解決解決♪
ん、おまえはもう帰ってよいぞ?」
「はい…」

姫神様は嬉しそうに本殿へと戻って行かれた。

私は一人残されて呆然とする。
ちょっと待て…何が解決なんだ?
そういえば私が来たとき、姫神様は何かお考えになっておられたな…
それが解決したと?
一体、何をお考えになっておられたのか。何の決心がついたのだろう。

境内には相変わらず誰もいない。
空は青く、風は冷たく、世界は何も変わっていない筈だった。

「何が起きようと一切を受け入れるってことだぞ?」

神様の事だから、悪いようにはなさらないだろう…私はそう思う。
ヒトの視線と神様の視線が同じだとは限らないけれども…きっと巡り巡って悪いようにはなさらないだろう…


でも、もしかしたら私はこう願うべきだったのかもしれない。

「今年が平和だったと言われた最後の年になりませんように…」と。

  1. 2014/12/30(火) 18:00:00|
  2. お話

とある審議会の定例議事録

ちょっと書いてみた。
前提としてヒトの会話ではないので、非人間的でもあしからず。
読んで不快になる可能性もなくもないのでそのつもりで。

・・・・・・・・・。
辺境領域開発審議会:惑星管理委員会と生物管理委員会を包括する部署。
惑星管理委員会:各惑星における生態系の導入、管理を主な任務とする。
生物管理委員会:各惑星における支配種のルーシュ生産、精製、運用を任務とする。


辺境領域開発審議会(以下、審議会)
「定例議会を始める。優先する議題がある場合は申し出ていただきたい。」

惑星管理委員会
「最近、惑星δ(デルタ)における生態系の崩壊が著しい件を、議題として提出する。」

生物管理委員会
「…異議なし。」

審議会
「了承した。」

惑星管理委員会
「惑星δにおける生態系の加速的崩壊の原因は現生支配種による惑星規模の商工業化であることが明確になっている。
このままでは、惑星規模の緻密な生態系が根本から崩壊し、再構成が著しく困難、若しくは不可能になる恐れがある。
早急に干渉する許可を願いたい。」

審議会
「具体的な干渉内容は。」

惑星管理委員会
「支配種の頭数の大幅な削減を希望する。」

審議会
「惑星δにおける支配種の管理は生物管理委員会の下にあるが。」

生物管理委員会
「確かに現在惑星δの生態系の崩壊は加速度的に進行しているが、δは現在ルーシュの主要生産地であり、頭数削減によりルーシュ生産が決定的に損なわれるのは望ましくない。
生態系の崩壊は、支配種自身をも害する結果になるため、支配種自身に解決させるよう操作することにしたい。」

惑星管理委員会
「それはつまり、支配種を優良化すると?
支配種を劣化させたのは生物管理委員会が極秘に行ったことだと当方は認識しているが。
ルーシュ生産の効率を大幅に上げるため、支配種の知的、感情的能力に干渉し、これらを劣化させ、短絡的思考、視野狭窄、自我肥大に基づく自己中心的性格を強化し、結果、相互破壊能力の向上、居住環境への無関心を生み出した。
我々の調査部門が把握したところでは、生物管理委員会はδ時間10000年前より支配種への干渉を開始し、6000年前までには知的感情的能力の劣化を完了したということだ。」

【人類の知能は2000年~6000年前がピーク説 】
《アメリカ・スタンフォード大学のジェラルド・クラブトリー教授は、人類の知性(知的、感情的能力)が2000~6000年前をピークにして少しづつ低下している可能性があるという研究を発表した。
それによると、狩猟採取生活は一瞬の判断ミスで命取りになるため、知性、感情に安定性があるほど生存できる。
このような自然淘汰によりこの時期最も知性が高い状態であったが、農耕生活により知性、感情の不安定性が生死に直接関係しなくなり、知性は低下の過程にある、と見ている。
つまり、歴史の中で農業や都市が発明され、命が脅かされるリスクが減ったことで、知能の低い人間が淘汰される機会が減ったことが、人類の進化(脳の拡大)を止めた原因だという。
主張によれば、人間は狩猟採集社会として生きてきた時代に進化の99%が終了しているそうだ。
これは脳の大きさの変化で明らかだという。》

生物管理委員会
「・・・・・・・・・。」

惑星管理委員会
「そして生物の優良化は劣化するよりもはるかに困難であるから、今から干渉しても効果が表れ始めるまでに早くても2000年以上かかると推測される。
現在の惑星生態系の崩壊速度からすると100年も維持できないのは明らかであるから、早急な頭数削減以外に方法はないと提言する。」

審議会
「生物管理委員会、異議はありますか。」

生物管理委員会
「…異議なし。」

審議会
「では、削減方法の審議に移りたい。」

生物管理委員会
「核戦争に基づく核汚染でよかろう。その時点で発生が見込まれる大量のルーシュも回収できる。」

惑星管理委員会
「先ほどまでは支配種の優良化を求めていたのに、どういうわけですかね。
核汚染は認められない。結果的に生態系の崩壊までつながりかねない。」

生物管理委員会
「気候寒冷化による食糧削減はどうか。」

惑星管理委員会
「いや、食糧争いから戦争になり、結果、核が使用される可能性が極めて高いため、食糧削減も我々としては認められない。」

生物管理委員会
「いや・・・・・・・・・。」

審議会
「発言は明確に。」

生物管理委員会
「いや、その、つまり…気候変動計画はすでに開始している。
惑星δをルーシュ生産効率の飛躍的上昇の実験地に指定し…」

惑星管理委員会
「その実験地指定は、審議会の許可を受けたものなのか?」

生物管理委員会
「当方としてはそのような許可は必要ないと認識している。」

審議会
「続けて。」

生物管理委員会
「気候変動計画において、惑星δの磁極を調整 したのだが、恒星αとの相互作用によりδの極移動 の可能性が極めて高くなった。」

惑星管理委員会
「我々の許可なしに、…連絡もなしにδの磁極を調整した…だと?」

生物管理委員会
「ルーシュ生産に関する計画は一括して我々の管理下にあると認識している。」

審議会
「その件については、別件として後日改めて審議したい。
つまり生物管理委員会は、ルーシュの生産向上のための実験として気候変動を予定し、結果、極移動の可能性が高まったと。」

惑星管理委員会
「それをごまかすために核汚染を考えたな?
核汚染で支配種を消去して、気候変動計画を極秘裏に葬って極移動の件は感知していないフリをするつもりだったか。
違うか?
優良化を開始したところで、間に合わなかったと嘯いて核汚染で消去するつもりだったんだろう?」

審議会
「憶測で発言しないように。
只今の問題は、惑星δの支配種の処分についてだ。」

生物管理委員会
「現状として、このまま放置した場合の支配種の頭数減少についての我々の予測としては、
戦争及びまたは原発事故による核汚染にのみ基づき削減される可能性は37%。
極移動に基づく気象変動、地殻変動にのみ基づき削減される可能性は24%。
核汚染及び極移動の双方に基づき削減される可能性は31%。
その他、不確定要因として8%。」

惑星管理委員会
「核汚染は惑星生態系の維持を前提とした場合、望ましくない。
核汚染開始以前に頭数削減に着手することが求められる。」

審議会
「ならば第二支配種の導入を提案するが。」

惑星管理委員会
「現支配種との間で核戦争にならないか。」

生物管理委員会
「導入に先駆けて致死性ウイルス を頒布し頭数を減少させておけばよい。
著しい効果があれば第二支配種導入の手間も省ける。」

審議会
「惑星管理委員会、異議はありますか。」

惑星管理委員会
「異議なし。」

審議会
「では以下のように決定する。
惑星δ支配種の削減は惑星δ時間20××年より開始する。
第一段階として、致死性ウイルスの頒布。
第二段階として、第二優勢種の導入。
ただし、第一段階のみで著しい効果が認められた場合、状況推移を確認しつつ第二段階は留保する。
また、第一段階効果発現前に、核汚染及びまたは磁極移動が生じた場合も第二段階には着手せずに状況推移に応じて対応することとする。
なお、最終的に少数の残存が予測される現支配種は、再び惑星生態系を破壊しないように、脳機能を無害に改造するものとする。
改造には非致死性ウイルスを使用する。
このウイルスは遅効性で、最終的な脳機能の完全無害化までに時間がかかるため、支配種削減開始に先駆け、直ちに頒布するものとする。

【「頭を悪くさせるウイルス」に44%の人が感染していたという事実が発覚 】
《感染すると脳の海馬に影響を与え、人間の認識能力を低下させるウイルスの存在が報告されました。
調査では被験者の44%が感染していたこのウイルスの感染経路は不明で、人体には「無害」であるとのこと。》

以上でよろしいか。」

惑星管理委員会
「異議なし。」

生物管理委員会
「…異議なし。」

  1. 2014/11/15(土) 18:00:00|
  2. お話

僕には 心がありません
心は地上に置いてきました
僕は今 何処にいるのでしょう
深い深い 海の底
光の届かぬ 淵の底
不思議な生き物たちが
闇の中から現れて
僕を啄んでは消えていきます

心を失くしたのはいつでしょう
それは昨日のことかもしれません


僕には 心がありません
心は故郷に置いてきました
僕は今 何処に漂っているのでしょう
遠い遠い 空の果て
星すら消えた深宇宙
それでもそのまた向こうの闇から
懐かしい誰かが呼ぶのです
こちらへおいで
真の闇を教えてあげよう

心を忘れたのはいつでしょう
それは生れた日なのかもしれません


人に触れ合うたびに思います
どうしてこんなに遠いのだろう
どうしてこんなに届かないのだろう

そうして僕は
人に届こうとしていた自分に驚くけれど
この距離を
いったいどうすれば埋められるというのだろう

わからないまま
僕は深くに沈み 
宇宙の果てを垣間見ます

世界は小さく小さく萎縮して
人は遠く遠くに離れていきます



テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/10/30(木) 21:41:39|
  2. 空言

世界は幾重にも

世界は幾重にも折り重なっていて
でも僕は一つの世界しか見えなくて
君も一つの世界しか見えなくて
そんな世界で
誰に何が届くのだろう

僕の世界は僕にとっては当たり前で真実だけど
君にとっては不可解で
あなたにとっては胡散臭くて
おまえにとってはバカげてる

僕にとっては
君の世界は楽しくて
あなたの世界は美しく
おまえの世界は退屈だ

世界は幾重にも折り重なっていて
隣の世界すら朧に霞む

僕らはいつまで気づかない?
無数に重なるこの世界に
僕らはいつまで安住できる?
脆く儚いこの世界に

重なり合った世界が
衝突し 罅割れて 砕けていく
互いに気づかぬままに
蝕み合い 打ち消し合い
消えていく 消えていく 消えていく

それは崩壊ですか
中和ですか
再生ですか
それとも 死なのですか

世界は幾重にも折り重なっていて
でも僕は君の世界の一面しか見えなくて
君も僕の世界の一面しか見えなくて
そんな世界でも
君がいてくれるならそれで十分なんだろう

テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/10/03(金) 21:33:36|
  2. 空言

神拝詞(となえことば)

はらえたまい
きよめたまえ
かむながら
くしみたまい
さきわえたまえ

俺はねぇ人間には絶望したよ
とか勝手なことを口実に
出鱈目な酒を呑みながら
気づくと呟いている

はらえたまい
きよめたまえ
かむながら
くしみたまい
さきわえたまえ

何を言っているのだ 俺は
人間なんてどうでもいいのだ
存在なんてどうでもいいのだ
もう何もかも知ったことではない

頭の逝かれたことを
繰り返し
繰り返し
繰り返し
生々滅々だか
生成消滅だったか
何でもいいけどそれだけの話だ

明滅して
明滅して
俺たちは何をやっているのだ
どうせ虚空に漂うだけなら楽しくやりゃいいのに
こんなものが楽しいのか

わからねぇ
わからねぇ
趣味が合わねぇ
生きて死ぬだけなのに
ワケが分からねぇ
裸足で逃げ出したい気分だ

そうして黙り込んで
気づくと呟いている

はらえたまい
きよめたまえ
かむながら
くしみたまい
さきわえたまえ

神拝詞(となえことば)といったか

今更まったく何を祈っているのだか
今更いったい誰のために祈っているのだか
いや  俺じゃねぇ
逃げ出す算段を捏ねているような
そんな自分のために祈ってどうすんだか


祓え給い
清め給え
神ながら
奇しみ給い
幸え給え

・・・

奇しみ給い
幸え給え

・・・

幸え給え

・・・

誰のために祈っているのだか

・・・

ラム酒もウォトカも
あんなに甘かったのに
なんだか苦くなってしまった


テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/09/20(土) 21:33:59|
  2. 空言

断片的想念

玄関脇で引っ繰り返っていた蝉
突ついたら ジジジッて鳴いて飛んで行った
もう長くもなかろうに
いったい何処へ行こうというのだろう

僕らは世界の中にいるはずなのに
何だか世界が遠くに感じるよ
君の記憶も遠のいて
君の笑顔も想い出せない

小さな小さな意地の張り合い
大切なモノは呆気なく砕けて消えて
夢とも現(うつつ)とも知らぬまま
僕らは何処へ行こうというのだろう

僕らは神の中にいるはずなのに
何だか神が見えなくなってしまったよ
何処かの僕らは狂い続けているようだけど
僕は僕の正気に自信がないから為す術もない

僕にはもう何もかもがわからなくなってしまって
ぼんやり世界を見ていたりするんだけど
僕も世界もやっぱりわからなくて
何もわからない僕は
もう何処へも行けないのかもしれない

テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/08/09(土) 11:49:44|
  2. 空言

空へ

何処をどう歩いてきたかは忘れたが
気付いた時には
理想は腐り
夢は錆びつき
哲学も
宗教も
薄っぺらくなって矛盾だらけで
ニヒリズムも
アナキズムも
ただの水溜りになってしまった

何もかもが
雨の日に園児たちが長靴はいてパシャパシャやってる
濁った水溜りだ
なんでそんなものがまかり通っているのか
なんでそんなものに満足できるのか

僕は溺れて死ねるだけの深さが欲しかったので
すべての消えていける深さが欲しかったので
一人で深淵を探しに行ったのだけど
海も湖も見つからなくて
延々と歩き続けてはみたけれど
この星には海も湖もないようで
僕は少し困ってしまった

つまんないな

そう思って寝転んで
見上げた空に
僕は溺れて死ねる深さを見つけた

嬉しくなった僕は少し笑って
そのまま空に 溺れて死んだ

何もかもが空の中に 小さくなって

やがて消えてしまった


テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/07/15(火) 19:51:05|
  2. 空言

存在する必要のない宇宙の中に
私が存在する必要など
ありはしないのに

なんで私は生まれたんだろうな
まだ生きてるんだろうな
存在してるんだろうな

この意識
私という認識

記憶された過去
想像される未来
此処という現在

何なのだろうな これは

わからない

わからないというのは 何なのかな
わからないという認識はどこから来るのかな
それもわからない

わからないということもわからない

存在する必要のない宇宙
それもまた私の認識

存在も必要も宇宙も消えて
私が消えて
残ったのは認識なのかな

わからないという認識
わからないという思考
わからないという意思
わからないという言葉

何なのだろうな これは…
  1. 2014/07/05(土) 06:50:33|
  2. 空言

渾沌

いつの間にか
生も死も
精神も物質も
何もかもが溶けてしまったようで
雨音の中に
渾沌を眺めている

地に足が着かない
…そうなのかもしれない

そうなのかもしれないけれど

私は…
地に着くことを頑なに拒んでいたようでもあり
足を着けるべき地が 見つからなかったようでもある

今更 地など何処にあるのだろう

着地点を探しあぐねていたら
いつの間にか
天も地も消えてしまったみたいで
何もなくなってしまったんだ

消えたのは錯覚だろうか
消したのは私だろうか

それとも
此処が 地だとでも言うのだろうか
  1. 2014/07/05(土) 06:49:35|
  2. 空言

曖昧な曇天の下の曖昧な僕ら

四週で呑む予定のテキーラが四日でなくなってしまったので
今日はペパーミントティーを飲みながら少しぼんやりする

明日からたぶん梅雨入り
降るのか降らないのかわからないような曖昧な曇り空は別に曖昧なわけじゃなくて
ただきっぱりと曇ってるだけで
本当に曖昧なのは僕らなんだろう

何もわからなくて自分のものなんか何もなくて
それは自分なんてモノが本来存在しなくて
ただ誰でもない何でもない純粋意識があるだけってことなんだろうけど
でもそれは前々から感じていた話で
たぶん当たり前の基本的な話で

なのにそんな当たり前の話を僕は時々忘れて
思考の世界でジタバタしてる
でもよくよく思えばやっぱり何もなくて
何もないんならただいればいいだけで
ただいるだけじゃダメだよなんて
そんなのは思考中毒患者たちの譫言(うわごと)だから
相手にする必要は全然ないのだけど
そんな譫言に僕はまだ少し毒されてるみたいで
せっかくの静寂を
自分のドタバタで台無しにしてたりする

なんだかひどくバカみたいだと自分でも思うんだけど
これがただの習慣の名残なのか
何だか知らないけれどまだ吹っ切れない割り切れない何かが残っているのか
そこら辺がよくわからないから余計にジタバタしてしまうのかもしれない

あの空みたいに曇天なら曇天できっぱり曇ってればいいのにね



  1. 2014/06/04(水) 21:54:36|
  2. 日記

Memento Mori

私らは世界を語る
目に見える世界を
目に見えぬ世界を
世界の成り立ちを
その構成と歴史を語る

私らはあるべき世界を語る
夢を 理想を 愛を語る

けれども 私らは死を見たろうか

私らは日々愚痴り怨嗟の呻きを上げているかもしれない
日々感謝と優しさと慈しみに満ちているかもしれない

けれども 私らは死を見たろうか
死という私らの双子の片割れを

隣人の死ではなく
親子兄弟の死ではなく
親友や愛人の死ではなく
私らの見ることのできる死は
私ら自身の死のみであることを
私らはどれほど知っているのだろうか

いつだって私らの隣に座っている死の素顔を
私らが本当に覗き込んだことはあったろうか
日常に埋もれ
喜怒哀楽を移ろい
私らは顔を背けてはこなかったろうか
私ら自身の隣に 背後に 目前に 足下に
或いは頭上に
死は常に在ることに
知らぬ振りを続けてはこなかったろうか
私らが私らの作り上げた小さな箱庭の壊れることをただ恐れたがために

私らは私らの死を
どれほど知っているというのだろう
遅かれ早かれ私らは死に抱き取られて死ぬだろう
それでも私らは
死を見知らぬままに過ごすつもりか
死を見知らぬままに死ぬるつもりか

死を見る度合いが
生を見る度合いだと
言ったのは誰だったか

死を見ずに 生を過ぎ行きて
それで 生きたことになるのか
それでも人は死ぬのだから
それでいいと多くの私らは言うのかもしれないけれど
あなたまでがそう言うのか

けれども私は一人 首を傾げる

私らの道標は
虚無ではない
孤独でも 苦でもない
私らの真の道標は

ただ 死 のみであるのに


道標も見ずに
私らは一体 何処へ行こうというのだろう


  1. 2014/06/03(火) 20:17:51|
  2. 空言

汎神論

神は 世界のすべて
世界の像(かたち)が 神の像
神の像は 世界の像

私たちは 今 此処で
神を造り続けている

神は 人を造り
人は 神を造り続けている

私たちは 狂気の神を造り
至福の神を造り
神の顕現であり続けている

あなたは言うだろう
この狂気の渦は何なのだ?

私たちが神を 私たちの外に見るから
わからなくなるのだ

あなたは問うだろう
神は日本をどうするつもり?

それはあなた次第さ と神の霊たちが笑う


元の元の大神様は
光でも闇でもない
何処までも透明な 透き通った水

私たちは水の中の水
魚になった夢を見ている
外にくるっと廻って闇を拡げ
内にくるっと廻って光を照らす
夢?いや…夢ではないのだけれど
近頃は闇が拡がるばかりのような
それでもやっぱり夢のような

私たちは夢の奥深くに入りすぎて
引き返せなくなってしまったみたいで
帰り道が わからなくなってしまったみたいで

このまま

戻れないまま

朽ちてしまうのかもしれない




  1. 2014/04/30(水) 21:36:48|
  2. 空言

綻びていく景色

今日 散歩をしていたら
景色が少し 綻
(ほころ)びていました

空は青色で
桜は薄紅色で
いつもどおりだったのだけど

それでもやっぱり
景色は少し 解
(ほど)けていました

(さび)色の時代が 近いようでした

僕は口の中に 血の味がして
唾を吐いたけど 血の味はとれなくて

見上げれば梢の先を 風が渡っていきます
鳥のいない空を 雲が過ぎていきます

いつもどおりの道に
いつもどおりの僕の影法師

それでもやっぱり
景色は確かに 綻び始めていて
解け始めていて
腐食し始めていて

それは誰も気づかないうちに始まっていて
誰もが気づき始めた頃には手遅れで
僕たちは泣き笑いながら死んでいくしかないのだけど

僕には為す術
(すべ)が ない

青い空も
薄紅の桜も
消えてしまうかもしれないのに

僕にはまるで 為す術がない

だから僕は
いつもの影法師を踏みながら
いつもの家路を辿りながら

そっと 世界を手放そうと思った




テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/03/30(日) 22:08:00|
  2. 空言

死と虚無を あなたに

死が空に満ち
虚無が地を埋め尽くす

誰もが視線をそらし
誰もが聞こえないふりをした

だから私は独りで死を叫ぶ

他の誰かの死ではなく
私は私たちの死を叫ぶ

そうして私はあなたに
私たちの死を謳おう


風は死を運び
世界は虚無に覆われる

誰もが嫌な顔をし
誰もが新たな話題を探し始めた

だから私は独りで虚無を語る

机上の空論ではなく
事実としての虚無を語る

そうして私はあなたに
虚無を捧げよう


誰もが立ち去り
私は独り
誰もいなくなるのを待つとしよう



テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/02/14(金) 21:20:17|
  2. 空言

雪に想う

雪の降る日には想い出します
世界がまだくっきりと輪郭を保っていた日のことを

善と悪が分かれ
人と獣が分かれ
生と死が分かれていた日のことを

風に舞う雪の中に想い出します
世界が陰陽に分かれて回転していた日のことを

愛と憎が分かれ
理と情が分かれ
天と地が分かれていた日のことを

その背反する二律が世界を世界たらしめていたことを

それはまやかしだったのでしょうか
あれはまぼろしだったのでしょうか

世界は精緻な機械のように
完璧な歯車と化して回っていたはずなのに

何処で狂い始めたのでしょうか
誰が楔を打ち込んだのでしょうか

まるで当たり前のように日は昇り
日は沈み

そうして世界が

渾沌の海に崩れ落ちたのは
いつだったのでしょうか



この果てのない混沌の中に
雪を見る日は想い出します


世界が


まだ


世界だった日のことを


  1. 2014/02/08(土) 13:50:46|
  2. 空言

終わりの日の夢

世界がねぇ
滅びる夢を見てさ

誰かとさぁ
遠くまで続く道を歩いて行くんだ

空が真っ赤でねぇ
星が燃えながら墜ちて来る
幾つも幾つも墜ちて来るんだ

僕は笑いながらねぇ
隕石ってのは高く売れるんだぜ
今なら俺達 大金持ちだ
な~んて言ってる

星が墜ちた処はねぇ
燃えていたよ
火を吹いていたよ

それでもねぇ
僕は笑ってるんだ
まるで
初夏のよく晴れた日の山歩きみたいに
すべてが完璧に輝いているみたいに

青く澄んだ空も
陽に輝く新緑も
そんなのは何もなくて
赤一色の世界なのに

道は何処までも続いて
丘の向こうに見えなくなっていて
その先がどうなっているのかなんてわからなくて
その先があるのかどうかすらわからなくて

それでもねぇ
僕は笑ってたんだ

あの時 僕といたのは誰だったんだろうな
顔も姿も全然思いだせないんだけど
あれは君だったのかもしれないな

まぁ 誰でもいいんだけどさ

まったくねぇ
変な夢を見たもんだよ



…世界がねぇ
軋み始めたせいかもしれないな




  1. 2014/01/08(水) 21:22:31|
  2. 詩のやうな
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